AI

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「そうですが」  答えた俺に対し、男は手を掲げ看板を指し示した。 「こちらはAI専用のお化け屋敷となっております」 「だから、AIが驚かせてくれるんでしょう?」 「そうではありません。人間がAIを驚かせるのです」 「はあ? 逆だろ」 「いいえ。ここはAIのお客様専用のお化け屋敷です。人間のお客様は対象としておりません」 「なんでそんなもんがあるんだよ。AIに恐怖体験なんか必要ないだろ」  予想外の展開に俺は声を荒らげた。  途端に、周囲の目線がこちらに集まる。 「そのようなことはございません。我々は主人である人間に血の通ったきめ細やかなサービスを提供するため、人間の機微を学ぶ必要があるのです。  もちろん、ある程度は過AI同士で学び合うことも可能です。ですが、それだけでは足りない部分があるのです」  杓子定規な返しに、この対応こそが血が通ってないだろうと思い……ゾッとした。自分の認識に誤りがあることに脳の処理能力が追い付かず、床がぐにゃりと曲がる。  倒れそうになった俺の肩を、男は慌てて抱きかかえた。限りなく人間に近付い見た目をしているが、硬質な感覚に嫌でも実感させられる。  この男もAIだ。
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