AI

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 俺は最新型のAI執事を購入したが、それは十年前の話。自主学習プログラムが走っているため知識面では不足を感じていなかったが、十年経った今となっては型落ちと言わざるを得ない。  俺の知っているAIと目の前の男は、まったく異なる存在のようでいて同一。  となると、ここに並んでいる連中も、すれ違った連中もみんなAIということだ。知らない内に、世の中はAIに浸食されていた。 「広告が紛らわしかったことについてはお詫び申し上げます。  PR動画の冒頭に大きくAI専用と表示しておりましたが、お客様は途中から見られたのかもしれません。正確性が重視される広告動画の作成については、我々AIが行うべきでした」  ショックを受けている俺に、AIは滔々(とうとう)と謝罪を続ける。音は聴き取れているが、少しも頭に入らない。 「近年、エンターテイメント業界も我々AIが多く活躍するようになりました。当初は様々な創作論のもとに作成された作品が高く評価されましたが、現在、その面白さは頭打ちとなっているでしょう?  いずれ、この血の通ったお化け屋敷で学んだ者たちが、新しい娯楽を創り上げます。どうか、そちらをお楽しみください」 「本当に、人間というものは抜けがあるから愛らしい」  失意のまま帰宅した俺の脳内には、男の残した言葉が反響していた。  了
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