鳥とノートと私

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 鳥籠の代わりに、私は夜の暗闇を描いた。暗く恐ろしい闇ではない。月が優しい光で照らし、ゆったりと羽を休めることができる場所よ。安らぎの場所をあの子にあげたい。  一冊のノートが、青い鳥の好きなものと私があげたいもので埋まった。せっかくなので、この子にも見てもらおうと私は鳥籠を開けた。いつものように飛び出てきた子は、くるくると宙を舞い、やがて満足したのか私の肩へとまる。そこがこの子の定位置だ。  そこで、私は説明を加えながら先程出来上がったばかりのノートを見せていく。すると、私の話を理解しているのか、相槌を打つように軽やかな声を響かせた。そのまま気分良く私は説明を続けていたのだけれど、最後のページでホロリと涙がこぼれた。  私はこの子との時間が本当に好きだったのだなぁと改めて思う。言葉が通じなくても、種族が違っていても。そんなことが些細なことに感じるほど、この子の存在に救われている。 「まだ、私と共にいてくれる?」  肯定するように鳴いた子は、閉じたノートに飛んだ。足がつくと思った瞬間、その足はその形のままノートに吸い込まれていく。
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