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私が殺したのは一人ではありません。
これは小野田真由美被告が二〇二三年四月十一日の初公判で語った言葉だ。
小野田真由美(当時三十五歳)は二〇二一年十二月二十五日のクリスマスに、同居人であり友人でもあった沼坂玲奈を扼殺。その後彼女は遺体を首、胴体、両手、両足の六つの部位に解体した。さらに彼女はあろうことかそれらの各部位を丁寧に梱包して、両手両足は沼坂玲奈の高校時代の同級生四人に、そして胴体は担任教師に宛てて郵送した。ただし頭部だけは未だに見つかっておらず、誰に宛てて送ったのか、もしくはどこに隠したのか不明である。
真由美と玲奈は小学生からの親友であり、二〇〇七年八月頃から二人は真由美の家で同居していた(これは自殺未遂によって下半身不随になってしまった玲奈を介護するためだったと考えられる)。
事件が発覚したのは同月二十七日。真由美からの“プレゼント“を開封した人たちからの通報によるものだった。
同日、警察は“プレゼント”が入っていた箱に記載されていた住所から真由美の自宅を特定し、任意同行を求めた。取り調べでは真由美は素直に殺害を自供したが、それ以外のこと──動機はおろか、玲奈との関係性についても一切なにも語ることはなかった。
以上が小野田事件のおおまかな経緯である。
そしてこの恐るべき事件から約一年四カ月後に開かれた初公判で、彼女は言った。「私が殺したのは一人ではありません」と。
この言葉にマスコミも世間も驚きの声をあげた。およそ一年半の沈黙のあとに言ったセリフがこれなのだから無理もない。しかも真由美は裁判官からの「誰を殺したのか」「なぜ殺したのか」などの質問になにも答えず、またしても黙秘を貫いたのだ。
彼女の一連の不可解な行動や言動はまたしても世間の注目を集め、多様な議論を呼んだ。心神耗弱説や愉快犯説、裁判を引き伸ばすための虚偽の告白であるという説などさまざまな意見が上がったが、当の本人は黙して語らず。結局なにも分からないままに、第二回の公判を待つこととなった。
ちょうどそんな時だった。小野田真由美から私のもとに手紙が届いたのは。
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