GENE

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「私達夫婦もそういったリスクについては承知しております。だからこそ、GENE公認のあなたにお願いしたいのです」  ここネオ東京01において、このやり取りは合法だ。より正確に言うなれば数年前から合法になったというべきか。この出会いはAIによって設計されたものだ。そしてここから生まれる命も、また。 「確認事項をお読みいただき、電子サインを」  [一度提供した遺伝子による子供の親権は、原則提供主に渡ることはない。ただ、子供の知る権利を尊重し、子供が望む場合は精子の提供主をネオ東京01人種保全型 AIである”GENE”を通じて知ることが出来る]  そう、この男に渡したものは僕の精子。そしてこの男はアンドロイドだ。  このネオ東京01では、アンドロイドと人間が番うことは珍しいことでもなんでもない。実際、彼も漫画から出て来たようなハイスペイケメン風アンドロイドだ。  僕は何度も口にしたこの台詞を今日もまた詠唱する。 「お二方の元にお子さんが出来ることをお祈りさせていただきます。GENEの加護がありますように」  僕が席を立とうとしたそのとき、ずっと黙っていた妻の方が僕を引き留めた。この人は人間だ。 「あの、実は申し訳ないことが一点あって......」
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