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「まさかアンタが陽世里に精子提供、ねぇ」
これは病院のベッドに横たわる実姉、游夢の言葉である。先程の夫婦から告げられたのは、妻の方は実は僕の姉の友人だということだ。僕は姉からの伝言で呼び出されてここに居る。
彼女は初めての人工授精の不安を友人に打ち明けたところ、ドナーである僕の話になり、僕の個人情報を勝手に話してしまったらしい。すると、ドナーの素性がまさかの相談相手の弟ーーつまり僕であった、ということだ。
こんなところからバレるとは。小さな椅子に座って下を向く僕を前に、姉はいつものようにチクチクとねちっこく小言を流してくる。
「しかも十年程度前から始めていたなんて、私の甥っ子、姪っ子は一体何人居るのかしら?」
「今は15人だ。GENEの規定で1人のドナーに対して子供は50人までと規定されている。今は間違ってもきょうだいで結婚したりしないように遺伝子チェックも必ずするし、問題ないよ」
「ちょ、は? 待ちなさいよ。じゅう......じゅうごにん!?」
姉はベッドの上で腰を抜かしそうになっている。
とある事故の影響で身体を悪くした姉は数年間病院生活を余儀なくされている。僕は必ずしも彼女とうまくいっているとはいえない関係性で、当然この活動についても何も言っていなかった。
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