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そうさ、恋を捧げるのは生涯一人だけでいい。
他の子の事は思い出でいい。
いつか運命の人を見つけて、その人のために今度こそヒーローになるのさ。
……なんてね。今でも叶ってないんだけど。
さあ、仕事が終わった。
疲れたし今日はゆっくりしよう。
そんな俺を待っていたのは、運命だった。
☆
ゴロゴロゴロ……
帰り道、だんだん空模様が怪しくなって来た。一雨降って少し涼しくなるといいけど、雷雨はちょっと嫌だなあ。
降り出す前に帰ってお風呂にしよう。世界でたった一つの、俺だけのための部屋に帰ろう。
子供の頃に好きだったキラキラしたものはみんな、知らない間にどこかへ行ってしまった。
でも、大人になって手に入れたキラキラもある。
それは「秘密基地」!
いや、ただ安いアパートで一人暮らししてるだけで、秘密なんてなんにもないんだけどさ。
誰にも気を遣わずに好きなだけ好きな事が出来る俺だけの基地には違いない。
部屋に高級品は何もないけど、テーブルもソファーもカーテンも何もかも全部俺の好みで揃えてある。見栄えは悪くない自信があるし、いつ女の子が来てもいい様に、それなりに小綺麗にもしてる。
散らかってる方が秘密基地っぽいけどな。
帰宅した俺は、まずエアコンのスイッチを入れてからシャワーを浴びる。
さっぱりしたら冷え始めた部屋で裸のまま、扇風機を回しながらドライヤーで髪を乾かす。
みっともないカッコだが、構うもんか。誰もいないんだから。
その時。
「あ」
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