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第489話 残るエンディングを前に
結果として、ミズーナ王女たちは無事に卒業できることになった。さすがに実技試験がトップの結果とあっては、文句のつけようがないというものだった。
エスカの座学試験もどうにか真ん中よりは上。最後まで赤点は回避し続けたのである。その分、周りの苦労はとんでもないものではあったが。
「はあ、私たちも苦労したかいがあるというものですよ」
無事にエスカも試験を突破したとあって、ミズーナ王女も安心した様子のようだ。そのくらいにはエスカのことで苦労してきたのだから仕方がないだろう。試験の度にこれだったのだから。
「これで残すは半月後の卒業パーティーだけですね。本当にこの三年間長かったわ」
ようやく終わりを迎えるとあって、安堵からか大きく息を吐くミズーナ王女。
「お疲れ様です、ミズーナ王女殿下」
「本当にね、メチル」
安心した様子で微笑み合うミズーナ王女とメチルである。その様子についつい不機嫌を露わにするエスカ。
「もうなによ。まるで私が心配の種みたいに扱わないでくれないかしら」
「違うのかしら?」
頬を膨らませて抗議をするエスカに、ミズーナ王女はきょとんとした表情で首を傾げて反応する。それではエスカもこれ以上強く出ることはできなかった。どうやらエスカには自覚があるようだ。
「まったく、転生者ならもう少し落ち着きなさいよ。厄介ヒロインじゃないですから」
「むぅ、分かったわよ……」
すっかりミズーナ王女に言いくるめられておとなしくなるエスカだった。
しばらくすると、アンマリアとサキの二人が部屋へとやって来た。
「相変わらず賑やかね、三人とも」
「アンマリア、それとサキも」
アンマリアの声に素早く反応するミズーナ王女である。
「三人とも、すぐに会議室まで来てもらってもいいかしら。至急の会議よ」
「本当に急な話ね。一体何を話すっていうのかしら」
頬に人差し指を当てながら考え込むミズーナ王女。
「それは会議室まで来たら分かりますよ。急ぎましょう」
サキの方もこの言いっぷりである。わけが分からないものの、これはついて行くしかなさそうな三人だった。
そんなわけで、アンマリアとサキの二人について会議室まで移動していく三人。一体どういう事か聞いても、二人はまったく答えてくれなかった。そのために、ミズーナ王女とエスカはちょっと首を傾げているようだった。
会議室に到着して、衛兵に声を掛けてから中へと入っていく。
中に入ったミズーナ王女たちは、中にいた面々を見て驚いていた。
「お母様?!」
「ふふっ、久しぶりですね、ミズーナ、メチル」
「って、こっちもお母様がいらっしゃいますけど?!」
「見たくないものを見たような反応、エスカ、怒られたいのですか?」
中で待っていたのはサーロインの国王と王妃、フィレン王子とリブロ王子の兄弟、ミズーナ王女の兄であるレッタス王子だけではなかったのだ。ミール王妃とベジタリウス王妃の二人までが待っており、これだけ王族が揃うというのもなかなかない光景である。
だが、去年はここにエスカの兄であるアーサリーもいたので、去年よりは人数が減っているのである。
「お母様、どうしてこちらにいらっしゃっているのですか?」
驚きながらも、ベジタリウス王妃のところへ走って詰め寄っていくミズーナ王女。するとベジタリウス王妃は慌てることもなく、にこやかな表情のまま答えている。
「卒業したら即国に連れて帰るためですよ。まだ婚約者がいないのですから、ミズーナと一緒に検討しなければなりませんもの」
「うっげぇ……、忘れてましたわ」
婚約者の話が出て、露骨に表情が歪むミズーナ王女。とても発言が王女のものとは思えなかった。
「メチルは、ミール王国でしたね。なので、サザイエと一緒にミール王国に向かってもらいます」
「しょ、承知致しました」
メチルが返事をすると、にこりと微笑むベジタリウス王妃である。
「そういうことだ。お二人は卒業と同時にそれぞれ王女を連れて帰るつもりらしい。そのために先程こちらに到着したばかりだ。何か言いたい事があればすぐに相談するといい」
サーロイン国王がミズーナ王女たちにそう告げると、サーロイン王妃を含めた王妃三人が一斉に一度大きく頷いた。
こうして、いよいよゲームの時間軸の終わりが近付いてきてしまった。
一足先にゲームの時間軸から抜け出したアンマリアと同様に、ミズーナ王女とエスカもエンディングのその先へと無事に進むことができるのだろうか。
学園の卒業パーティーまでは残り半月。登場人物たちの中でもベジタリウス王国のミズーナ王女とレッタス王子は、婚約者の影すら登場していない。
ゲームのエンディングを迎える半月の間に、二人に何か進展はあるのだろうか。それともこのまま国に戻って王妃主導の下で婚約者探しになるのだろうか。
部屋に戻ったミズーナ王女は本気で悩み始めたのだった。
勉強では苦戦していたエスカも、婚約者の話となれば立場は逆転。今度は勝ち誇ったようにミズーナ王女を見つめていたのだった。
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