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サブの方が早く近づく音をキャッチした。
「パトカー?もう追手が?」
逮捕されたらこれまでの盗みが失敗に終わる。撤収が最優先事項に変わり、詰め終わったトランクから裏口に運ぶよう作業ロボに指示を出した。ぼくの耳にもサイレンが届く。ヤバイ、逃げなきゃと思うけど、まださっきのショックで心臓がバクバクして、体がうまく動かない。
「ヨウ、下がれ」
「え」
振り返ると、玄関からコハルが飛び込んできた。普通の銃より太い銃身を構えてサブに放つ。胴体と頭、大小のバケツとバケツの隙間に、特大のホチキスの針が食い込んでビリビリ発光していた。サブの回路がショートして、一つ目の光が消える。
「頑丈な装甲だからな。こっちの方が効く」
「コハル」
「タツに何かあったら、ヨウを逃がすよう言われていたんだ。盗賊団も逮捕しろと」
「逮捕?」
「タツ盗賊団は。タツがいなくなったらタツ盗賊団じゃなくなる」
「そうだけど」
「サブがあっさり行う排除を止めるものがいない」
そっか。
「そうだね」
ボスのタツがいなきゃ。
〝オレ様の名前で当然〟
ホントにそうだ。唇を噛みしめて、得意げな笑顔で胸を張っていた広間を見渡す。
「ヨウ、これを」
皮の財布を渡された。
「当座の金と口座、住居の準備はしてある。応援を呼んでいるから、来る前に行け。急げ」
「あ!サブが地下室の爆弾セットしたって」
「ああ、非常用のか。それなら私もアクセスできる」
コハルは自身の左耳の後ろに指先で触れた。
「止めた。大丈夫だ」
「・・・ワタシ、失敗、シナイ」
「!」
駆動音がきしり、サブの太い腕がいきなり振り下ろされ、床の一部を叩き割った。現れた赤いボタンを押して有り余る力はそのままボタンを破壊してしまった。
「ミィッション、コンプリ―トォォ!」
一つ目を点滅させながら、腕の銃口から発砲し始める。電光石火でコハルが分厚いダイニングテーブルをひっくり返して銃弾を防いだ。抱えられてテーブルの陰に伏せたまま、開いた口が塞がらない。サブほどではなくてもいざとなれば人間よりすごい力――聞いてはいたけど。初めて見た。
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