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「よく聞け、ヨウ。非常にまずい状況だ。サブが押したスイッチでまた爆弾のタイマーが起動した。遠隔では止められない。その上、時間がない。押して五分で爆発する」
「五分?」
「あと四分二十五秒」
「ミ、ッショ・ン」
一度ショートして移動はできないみたいだけど、サブは腕を振りまわして天井や壁のあちこちにまだ発砲している。
「いいか。あの開けたままの玄関に私がヨウを投げるから」
「投げる?」
「ヨウが走るより早い。止まったり振り向かれたりしても困る。着地の際、頭を打たないように両腕でしっかり庇えよ。すぐ立ってすぐバイクに乗ってここから離れろ。いいな」
「うん、でもコハルは」
「ヨウが撃たれないようサブを食い止める」
「だめだよそんなの!しかも爆発するだろ、止められないんだろ」
「私はヨウを逃がしに来たんだ」
「でも」
「振り向くなよ。行け」
コハルはぼくが叫ぶ間も冷静に目線を動かして、距離と力加減を測り着々と準備を整えていた。背中に触れたコハルの手はやさしくて。
「時間がない。心配しなくていい」
ふと目元が緩む涼やかな笑顔もいつものとおりで。
「人間は。自然に忘れることができる」
なのに、次の瞬間には有無を言わせず抵抗できない圧力で、ぼくを体ごとアジトの外へ押し飛ばした。
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