桜色の三日月

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 何度見ても変わることのない発表ページを流奈(るな)は飽くことなく見つめ、ほうっと息をついた。  小説投稿サイト『スター☆ノベル』で毎年開催されている『スタノベ新人文学賞』は、今年で二十三回目となる。今年は応募総数が千を越え、その多くの作品の中から大賞に選ばれたのが流奈の『桜色の三日月』だった。  発表があったのはもう一ヶ月も前のことだったが、流奈はいまだに夢見心地で毎日のように発表ページを眺めている。小説家になることは流奈の幼い頃からの夢だった。実際に小説を書きはじめたのは中学生の頃で、苦節十年、やっとその努力が実を結んだのだ。 「ねえ、どっちの服がいいと思う?」  うっとりと発表ページを眺めているとノックもなしにドアが開き、双子の妹・流華(るか)が顔を覗かせた。右手に白、左手にピンクのワンピースを持って。 「ノックくらいしてよ」 「いいじゃん別に。ね、どっちがいい?」  同じ顔であるはずなのに、流華のほうが華やかに見えるのはどうしてだろう。髪型のせいか、それともメイクか。いや、それは性格の違いからくるものだとわかっている。真面目で引っ込み思案な自分と天真爛漫な妹。勉強はいつだって流奈のほうが上だったが、かわいいねともてはやされ愛されるのは、いつだって流華のほうだった。
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