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はじまりの夜
「わ、わ、わ、私が、あ、あ、あなたを愛することは、絶対にないからぁっ」
そう言って、ベッドの影から叫んでいるのは、一応の式を挙げたばかりのお嫁さんのプティラ。式って言っても、参列者はいなかった。母の三度目の出産で五番目に登場したチビ殿下を、盛大に祝おうとはしてくれなかったのもあると思うし、僕のお嫁さんを気遣った結果かも知れないし……。
僕たちと神父さまを入れて、五名くらい。内二人は、全然知らない人。多分、通常礼拝の人だったんじゃないかなぁ……。
兄弟の数の順番で言えば、十三番目。
かなり不吉な数字。だから、教会はとても静かだった。
とりあえず、「愛することを誓いますか」と言う神父さまがいて、「誓います」って声が国中に広がるんじゃないかと思えるほど、響いた。その時から、カタカタ震えて声も出なかったんだから、言葉が出ただけでも良しとする。
「だから、近づかないでぇっ」
「うん、大丈夫。近づかないから」
そう言うと、耳が影から伸びてくる。僕の三角耳と違って、細長い耳。
艶のある茶色の頭。そして、ぴょこっと見える長い耳と焦げ茶色の瞳までは見える。
ちょっと面白くなって、おんなじようにベッドの影から同じ高さで、目線を合わせる。
目が合うとぴょこっと隠れてしまう。
ベッドを挟んだ向こう側では、膝を抱えて座っているのかな?
そう思い、同じように膝を抱えてみる。
意外とお尻が痛い。
「ねぇ、お尻痛くない?」
「だ、だ、だ、いじょう……ぶ」
「そ」
怖がられても仕方ない、とは思っていた。
だって、プティラはウサギで、僕はオオカミ。
これは、分かりきっていた結果だ。
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