満月の夜におちる魔法、朝焼けの光にとける魔法

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そんな夜を思い返し、私は今一人で満月を眺めていた。  夜空が澄んでくる秋の終わりにある遠吠え会は、一番大事なのだそう。冬に入るその手前、たくさん食べておきたいオオカミたちは、狩りに力を入れる。  草食獣との約束を反故にしないためには、子育てに忙しい『春』とこの『秋』だけは、天候で会が延期されても、欠席すれば王族除籍もあり得るくらい。  ウサギさんを護ろうと思えば、王家除籍されたら大変でしょう? でも、約束は有効だから……そこは心配しないでいいけど……。  でも、だから、この二回だけは絶対に外せないんだ、って言ってた。  そんな大切な会。  きっと、そんなことも知らないまま、今までのウサギは過ごしてきた。  ダイ様が除籍されても約束は有効。その意味するところも一ヶ月かかってやっと分かった。キャナルさんが頑張らせてあげてと言った理由も、同じように分かった。  だから、頑張る。  先月言われたことを思い出す。  満月が真上に来るまでに食事を取って、仮眠する。  温かくして出ておいで。この時期はとても冷え込むから。  銀色のオオカミのダイ様が、「行ってらっしゃいませ」の後、綺麗な色のお菓子をくれた。食べて待っててって。  マカロンって言う名前。  可愛い名前だと思う。  まぁるい形は、今日の満月とそっくり。  サツマイモの味と、栗の味と、カボチャの味は、秋の特別なんだそう。  キャナルさんが教えてくれたんだって。  薄い黄みがかった白い色はりんご味。ニンジン味も私が好きそうだからと、箱に詰めてくれた。  全部私が好きかなと思った味なんだって。  それなのに、ダイ様の好きなりんご味が入ってる。  変なの。  だから、白色はダイ様で、ニンジン色は私。  二つ並べて箱の中にしまっておく。
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