満月の夜におちる魔法、朝焼けの光にとける魔法

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 ダイ様は秋の遠吠え会に行ってしまった。  ダイ様の王族としての唯一の公務。  リルラさんも帰ってしまっている。  大きなお屋敷にマティとふたり。マティにはお部屋にふかふかの布団を敷いてあげて、ついさっきまで一緒に添い寝をしていた。  箱は水色でピンクのお花の模様。金色のリボンが付いていた。ぎゅっと抱きしめて、空を見上げる。  今日も綺麗な満月が、空に浮かんでいる。  満月が真上に来た時に、遠吠えが始まる。  マントの上からショールも掛けて、玄関入り口のポーチに座って空を眺めている。ぼんやりせずに、聞き耳を立てて、時を待つ。  今日はここで待っててって、ダイ様が言った。  何かあれば、すぐに家の中に入れるから。  遠吠えは遠くにいる一般オオカミに向けてされるもの。『オオカミの国にいる一般ウサギを食べないように』もその遠吠えに含まれている。  一匹狼がどれくらいいるのかは分からないそうだけれど、オオカミの国の国内で生きている群れの数は、現在五十程らしい。数が曖昧なのは、オオカミは移動するから、増えたり減ったりするのだそうだ。    だから、五十回返事が返ってきたら、お終い。 だけど、残念ながら、別の国にいるオオカミには届かないそうだ。    王族で遠吠え会に参加をするのは、ダイ様を入れて二十頭。  ご両親である両陛下と序列第七位までのご兄弟、それから、おじ様おば様。その第三位までのお子様方。  私の知らない人はまだまだたくさんいらっしゃる。  あのサイ兄様も入っているそう。彼は第三位。四位までは王位に就くことが許される。でも、群れを引っ張る大事な役目にはあるけれど、彼も王位には就かないだろう、とダイ様が言っていた。  オオカミの血が強すぎるんだそうだ。  草食や人、色々なものが同位に存在するこの世界では、それが徒になる。  逆に、ダイ様はオオカミの血が薄すぎるそう。  もし、力の強い一般オオカミが出てきたら、抑えきれないかもしれないと危惧される。  生肉でお腹を壊すんだ。  だから、プティラのお婿さんになれた。  って、笑って言って。  ずっとプティラのお婿さんでいたいって言った。  私もダイ様のお嫁さんになれてよかった。私もダイ様が良い。  だから、耳をピンと立てて準備する。そろそろ始まる遠吠え会。
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