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ウサギのお姫様はオオカミの国へ嫁ぎました。
嬉しいことも、楽しいことも、辛いことも、悲しいこともありました。
オオカミの王子様はそんなウサギのお姫様のために一生懸命ウサギの国やその他の草食獣の国について、王様と話し続けました。
一般にしかならなかったオオカミの子と、一般にしかならなかったウサギの子には人化の親がいること。
同じであること。
両方が大切な存在だということ。
各国の王様達は寄り集まり、隣り合う席で、頭を悩ませながら妥協案を出し続けました。
知らないということではなく、知っている上での妥協案は、他の条約に比べるとどこか温かさが詰まっていました。互いが互いを庇いながら作られた条約です。
一般同士のことは、一般に任せる。
人化同士のことは、人化で解決する。
ただし、これまで通り、肉食獣は一般獣が全ての人化を襲わないよう警戒に努めること。そして、草食獣は政略結婚による一般保護条約の締結を止めること。
両者が出した妥協案は、悲しいけれど、優しいものでした。
「今日はフーラがサンドイッチを作ってくれました」
「ほんとだ、真面目に真っ直ぐなパン」
バスケットの中には大きなサンドイッチと小さなサンドイッチ。そして、りんごが二つ入っています。
オオカミの王子様が当たり前のようにして大きい方のパンを摘まみ上げ、笑います。
大きな木の下で、ウサギのお姫様とオオカミの王子様がピクニックをしているのです。
彼らの視線の先には茶色いウサギが三匹、鼻をヒクヒクさせて、ふたりを見つめた後に草を食べます。
「マティそっくり」
ウサギのお姫様とオオカミの王子様は、いつも寄り添い、相手の立場を想い合うことで、いつまでも末永く幸せに暮らしたと言われています。
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