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「新しくは、見えないです」 と、遠慮がちにつぶやく様に言った。 「そうかい、お客さん。面白い物見せてやろうか?」 「面白い物ですか?ど、どんな物ですか。」 と、言葉が泳いでいる。 別に期待しているのでは無いのだが、 何か卑猥な事を期待している僕だった。 男は、ガラスのケース箱から一台の古そうなカメラを出してきた。 最近のレジタルカメラではなくフイルム式のカメラである。 「お客さん、このカメラは優れ物だよ。」 と、嬉しいそうに私の顔を覗き込む ……騙されてはいけないぞ!…… と、僕は自分に言い聞かせて 「どう優れているのですか?」 と、怪訝そうに聞く。 フフフと😆笑いを堪えるかの様に店主は言う。 「これはな!」 「うん、これは」と相槌を返した 「これは、霊を撮れるカメラだ! 世界にこれしか無い!」 と、自信をもっているのか、真剣な眼差しである。 そのカメラには「霊を写せるカメラ」と銘打たれたステッカーが貼ってある。 ……嘘くせい。こんな眉唾物信じられるか!…… と、怒りに似た感情が湧いてくる。 「嘘だと思っているだろう? 私は嘘などつかない、正直者だ」 と、目は真剣そのものだ。 その真剣な眼差しに私は負けてしまう。 「これってお幾らですか?高かったら買う事は出来ませんが。」 と、買う意思を示してしまった。 「これは、売りもんじゃねえよ。」
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