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山が唸ったのは、山が揺れたからだ。
山がとてつもなく大きく揺れたのなら、爆発する前兆なのだ。
希美がC村でそう教わったのは、子どものとき。
C村では夏祭りの日、近所に住む長老と言っても良いくらいに長生きのタエ婆さんにそう教わるのだ。
希美が丁度小学校の三年生くらいだった。
その後暫くして過疎化のため廃村となるC村であったので、一緒に話を聞いたのはもう一人確か学年が少し上の男子だけだった。
C村にある大きな森の隅に位置する古い古い神社で、二人はわたあめを手に話を聞いた。
C村も海に面していて、祭囃子と共に塩の匂いがしていた。
そしてその反対側では、月明かりの空に、富士山が高く大きくそびえていた。
「海の地震は津波を連れてくるんじゃ」
タエ婆さんが水平線を指差し言った。
希美は海を見た。
岸壁の向こうの海。
船の行き交うその場所を恐ろしく感じたことはない。
「津波は全てを流してしまう。この海に面した全てのものが一瞬でなくなってしまう」
タエ婆さんは悲しそうだった。
そして今度は富士山を指差した。
「山の地震は真っ赤な溶岩流を連れてくるんじゃ」
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