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 空を鮮やかに彩る光とドンッと体に低く響く音。  間近で見るそれは迫力満点で、全員で見れないのが残念だ。  善一と孝一は海辺にある温泉地に来ていた。  毎年、夏の時期は夏央と雅俊も加えた四人で夏期休暇を利用し、日々の疲れを癒すために温泉旅行に行っていた。  だが、今年は善一と孝一しか予定が合わなかった。  プロのシングルプレイヤーになった夏央と雅俊は、マレーシアで行われるオープン戦に出場するために日本から飛び立っていった。  残った二人で話し合った結果、花火が上がる日に合わせて、打ち上げ場所に近いこの温泉宿を取ったのだ。  観光は翌日の楽しみに取っておき、今日は種類豊富な温泉やサウナと、追加料金を払ってワンランク上にグレードアップさせた豪華な晩御飯を堪能し、部屋に戻ってきた。  この部屋は花火の打ち上げ場所の正面に位置していて、広縁にあるテーブルセットは旅館が気を利かせたのか対面ではなく窓を向いていた。  二人は月見酒ならぬ花火見酒をすべくロビーで地酒を何種類か買い、部屋に備え付けられていたお猪口を取り出した。  そして、座面と背もたれ部分がふかふかのクッションになっている椅子に座ると、花火が上がる前から酒を酌み交わし始めた。  孝一とは毎日会っていて、仕事のグチをなんかを話してしまえば思い出話に花が咲くのは自然な流れだった。 「懐かしいな。高一の時だっけ?」 「そう。俺たちがダブルス組んだばかりで一番夏央がうるさかった時だよ」 「今もうるさいだろ」 「それは言うなって」  敢えて言わなかったことを孝一が言ってしまうものだから、お猪口を持っていた手をガクンと揺らしてしまった。  入っていた日本酒がとぷんと揺れて少し零れてしまった。 「あーもー。孝一のせいで零れたじゃん」 「俺のせいじゃねえだろ」  そう言いつつ、面倒見のいい孝一は広縁の隅で干していたタオルをタオルハンガーから引き抜くと、丸い机に散った透明な液体をそれでさっと拭って粗相の証拠隠滅をした。 「大体、俺らがプロにならなかったこともギャンギャン言ってるだろ」
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