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そして迎えたインターハイで、二人は全国ベスト四の中に名を連ねた。
その時、バドミントン雑誌から取材を受けた。
当然、プロにはならないことを公言したわけだが、そのインタビュー記事が載った雑誌が発売されると、今度は大学や実業団からのスカウトがかなりの数舞い込んできた。
「進路、どうする」
インターハイで部活を引退した二人は、どちらかの家で勉強しつつ進路について話し合った。
実業団に入るなら同じところに、そうでなければ別々の企業に就職することになる。
大学にも進学するなら同じところだ。
進学、就職ともに応募の申し込みが目前に迫り、両親からも顧問からも決断を迫られていた。
「大学はなぁ。俺、元々頭悪いし」
「試験はいつも危なっかしいし、資格の筆記も合格ラインギリギリだよな」
「だから孝一に教えてもらってるんだろ」
「そうだな」
善一は運動神経や手先の器用さは抜群に良いが、勉強となると途端にダメになるタイプだった。
ついでに言えば、バドミントンは本能でやるタイプなので、例えばチームメイトに指導するのは擬音語が多く向いていない。
対して孝一は勉強はそこそこにできるタイプで、大体は平均点以上は取れるのだ。
バドミントンは善一と同じく本能でやるタイプだが、感覚を言語化できるので指導もできる。
その点から、大学への進学は難ありだった。 仮に進学したとして、善一が留年する可能性があった。
「実業団は?」
「工業系。ちゃんとその仕事をさせてもらえるところで練習は夕方以降。あと結果を求められないところ」
「結果を求められないってのはちょっと無理あると思うが、前二つの条件には同感だ」
実業団枠で就職する以上、結果を求められるのは当然だ。
つまりは義務感ありきのバドミントンとなる。
それは善一も孝一も希望とは逸れてしまう。
「でも、今でさえバドミントンしないと体がウズウズするのに、普通に就職して残業があったりしてバドミントンができないってなると正直キツイな」
「試験勉強し始めて二日。俺も正直限界だ」
「結果重視じゃないところってあったっけ?」
「ちょっと待って。蒲谷先生から貰った一覧出す」
孝一が鞄を漁り始めた。
出てきたのはクリアファイルに挟まった企業の一覧とそのパンフレットの束だ。
既に工業系以外の企業は赤線で潰しており、あとは条件を洗い出すだけになっている。
善一は孝一と共にそれを覗き込み、条件に合った企業を絞っていった。
残ったのは三社。
翌日、顧問の蒲谷を通じて詳細な条件を確認したところ、地元の大手国産自動車メーカーが善一と孝一の気持ちを汲んでくれた。
その一ヶ月後に行われた二人同時に受けた面接で採用担当者や監督とみっちり話し込み、彼らの人柄にも感銘を受けた。
それが決め手だった。
そうして、善一と孝一はアマチュア選手として歩き始めた。
プロになって一緒にバドミントンを続けると思い込んでいた夏央には散々説得されたが、もう決めたことだ。
善一と孝一の気持ちが変わらないと悟った夏央は、人の目も憚らずファミレスで男泣きした。
泣くほどだとは思わず、延々と泣き続ける夏央を孝一と雅俊と三人で慰めるのは骨が折れた。
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