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「できます。命は尊いものですが、人によって他者の命には優先順位があると思っています。僕は、僕にとって大切な命を選びたいと思います。だから僕にはできます」
学校の先生(AI)からも好評を得た答えだった。AIは矛盾を嫌う。シスウイには分かっていた。
『素晴らしい』
アクラは嬉しそうにそう言った。そしてシスウイは乗船を許された。
アクラは船長としても優秀で、ナラのいる惑星までの航行コースやコールドスリープ中の身体の状態について細やかに説明をしてくれた。だから、ほかの乗客たちも安心している様子だった。
次に目覚めるときにはナラの待つ惑星だ。そう思って目を閉じたのに、何かがおかしい。
(この白い壁はなんだ?)
寝ているとも起きているとも違う、不思議な状態にシスウイはいた。いや、起きているのか。少しずつ身体の感覚を取り戻している。
「……おい、おい、おい、おい」
感覚がもどってきた鼓膜に、一定のリズムで呼びかける声がした。人間の声だ。汚く耳障りなので、AIの声ではないことはすぐ分かった。
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