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アンドロイドが生まれたそもそものきっかけは、人が自らの理想的な分身を求めた事に始まる。遺伝子の気まぐれによるランダム性を排除し、理想のみを追及した完璧なヒト。
ロボット工学から発展した技術は、完璧と言うにはまだ程遠く、特に心の再現には問題が山積していた。
現時点では、アンドロイドとは人の理想形をなぞるプロトタイプでしかない。いつの日か、その内側に心が宿ることを願い、わたしは彼女の世話を続けている。
「コハル、外に出ましょう」
朝の補給を終えると、彼女は散歩をねだってくる。
屋敷を出て、公園のプロムナードまでゆっくりと歩を進める。木立の間を歩いている時、彼女はいつもわたしに問いかける言葉がある。
「今日の風は、何色でしょうか」
「風に色などありませんよ」
これもまた、毎日繰り返されるやりとりだ。彼女なりに何かを感じ取ろうとしているのだと、わたしは捉えている。
散歩から帰ると、学習の時間だ。文学や歴史、科学に関する書物の内容をインプットする。文字や図などで表された情報を分析して知識として学習する。高度な情報処理技術を要するプロセスだ。
「コハルはどんな学問が好きですか」
これもまた、彼女がわたしに尋ねる常套句だ。
「学問に優劣などありません。どれも等しく学ぶべき事項です」
わたしが答えると、彼女はいつも不思議な表情をする。毎日聞いてくるぐらいだから、わたしが言う意味が理解出来ないのだろう。
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