心の在処

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 夕食を済ませて体を洗浄すると、彼女は早々にベッドに入る。一日の活動で酷使した体を休め、各パーツのチェックと自動修復を行う。 「コハル、一緒に寝ませんか」  ふと、彼女がわたしに言った。これは始めてかけられた言葉だ。 「何故ですか」  わたしが聞くと、彼女はまた不思議な顔をする。 「一緒にいたいからです」  わたしには、彼女の言う意味がわからなかった。体のチェック機構を正常に働かせるには、正しい姿勢で固定しておく必要がある。シングルベッドは元々一人で眠るための寝具。無理に二人で使用すると、メンテナンスの効率も落ちるはずだ。  その事を伝えようとしたとき、彼女の表情が変化した。八の字に眉を動かし、口角を下げて、うつむいている。これは、悲しみの表情そのものではないか。
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