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間もなく、彼女は目を覚まさなくなった。現代の医学では治療法のない、不治の病。生命活動は行っていても、声を聞くことも、表情を変えることもない。
彼女の研究室に残された手記には〝娘〟に対する思いが綴られていた。喜びや悲しみを分かち合うこと。そんな日を夢見て、彼女はわたしにプログラムを施したのだ。
ベッドに横たわる彼女に寄り添い、わたしは新たなるプログラムに取り組むことを決めた。人を凌駕する知能を持つわたしだからこそ可能な、治療法の確立を目指して。
「おはようございます、ミカ」
今日も、わたしはベッドの上の彼女に挨拶をする。
彼女のバイタルをチェックし、補給すべき栄養の調整を行う。体を拭いて髪を整え、少しだけメイクを施す。
ベーコンエッグの朝食を頂き、プロムナードに散歩に出かける。空を見上げると、柔らかい風が頬を撫でた。
今日の風の色は少しだけ青い。そんな気がした。
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