夢のような薬

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新農薬 説明会。 農薬研究機構の方が農家さんへ農薬の説明をする会だ。 開発責任者「えー、このたびは、お集まり頂き誠に有難う御座います。」 開発責任者「この度お集まり頂きましたのは、もちろん言うまでもなく、新農薬が出来ましたので、それの説明をさせて頂きたいと思います。」 農家さん、総勢35名。どんなものかと期待しながら、語りだすのを待っている。 そして、責任者が語り始める。 開発責任者「このたび、出来上がりましたのは、まさに夢のような薬でありまして!! この説明をするのがもう楽しみで仕方なかった次第であります。」 農家さんたちの期待値が跳ね上がる。 ドキドキ。ワクワク。 開発責任者「このたび、出来ましたのは、もうこれ以上ないと言っていいものでありまして!」 早く言ってくれ!!! 開発責任者「すみません。ちょっと焦らしてしまいましたね。 そう、今回の薬はオールイルセクトバスターフロアブルという薬になります。」 オールイルセクトバスターフロアブル??長っ!! で、結局それはなんなんだ!!? 農家さん一同がざわつき始める。 (フロアブルは薬の性状を示すもので、薬の名前とは関係ありません。他に水和剤、乳剤、顆粒水溶剤など色々あります。フロアブルは、ざっくり言うと凄く混ぜやすい液体です。) 開発責任者「えー、この薬はその名の通り、全てのイル(病気)+インセクト(虫)をバスターする薬になっております。」 な、なんだってえぇぇぇ!!!! 農家さん一同。興奮して、立ち上がる。まさに、スタンディングオベーション状態だ。 「う、嘘だろ!?そんな奇跡のような薬、あるわけない!!」 1人が尋ねる。 開発責任者「それが出来てしまったから、私どもも皆さんの反応が楽しみで仕方なかったんですよ。」 「どうせ。何か裏があるんだろ??1つの野菜にしか使えないとか、一回しか使えないとか。」 またも1人が尋ねる。 開発責任者「そんなことは、ありません!!そんなことだったら、説明しに来ません。この薬は、何回でも使えますし、どの作物にもお使い頂けます!!!」 「ほ、ホントですか!!?そんなことあり得るんですか!!?まさに夢のような薬じゃありませんか!?」 1人が言う。 開発責任者「だから、夢のような薬だと言っているじゃありませんか。名前をドリームにしようかどうか、悩んだまでありますよ。」 「そうなんですね!!もう、早速持って帰って使いたいんですけど!!!」 1人が言う。 開発責任者「えー、ただひとつ。注意点がありまして。」 「なんですか!!?」 開発責任者「ホモサピエンスもバスターしてしまうんですよ。」 「ふ、ふっざけんじゃねええぇぇぇえ!!!!」 農家さん一同ぶちギレ。 開発責任者「・・・いやぁ、皆さんのその顔が見たかったんですよ……!」 そう言って、ニヤニヤしながら帰っていった。 終わり。
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