おい。忠太。

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忠太は考える。 何でも一つ。何でもと言われるとなかなか決められない。 忠太は、思いつく願いを書いて見ることにした。 1、お金持ちになる。 2、綺麗な嫁さんが欲しい。 3、子供は三人欲しい。 4、ちゃんとした家が欲しい。 「まぁ、こんなものか。」 どれも、今の忠太には手に入れる事が難しいモノばかりだ。 「しかしなぁ、どうしたものか。」 叶えられる願い事は一つだけ。 「お金か?いやいや、綺麗な嫁さんか?」 「待て待て、子供も居たらきっと楽しいだろう。」 「それより、このオンボロな家を立派な豪邸するのも、、、、。」 忠太は、考えるがなかなか決める事が出来ない。 むしろ、だんだんとこの願い石を使う事が勿体ないとすら思い始めてきた。 そして、忠太は思い出す。 「旦那は、優しくて賢い」狸に言われた言葉を。 「俺は賢い・・・・・。」 「そうだ!俺は賢いんだ!」 一つしか叶えられないなら、自分で出来る事は自分でやってみよう。 嫁さんや子供は、自分一人ではどうにもならない。 自分一人で出来る事・・・・・。 「そうだな。まずは金だな。金持ちになろう。」 いい仕事に着けばお金をたくさん稼げるハズだ。 昔、いい仕事に着くには学校とやらに行かなければならないと、父から聞いた事がある。 「よし。学校に行こう。」 忠太は、13歳にして初めて学校に通う事になった。 どうやら、学校にはいくつかの種類がある事がわかった。 忠太が通うのは、小学校というところで自分よりもずいぶん小さい子供ばかりだった。 飛び抜けて大人な忠太であったが、そんな事は特別気にならなかった。 むしろ積極的に勉強を頑張った。 特に好きだったのが、算術だった。 今までの生活で、足し算や引き算を感覚的に行なっていたが、こうして式を習うとぼんやりしていたものが固まっていく感覚があった。 他にも、自然と行なってきた事にそれぞれ名前がある事も面白かった。 少ないが友達も出来た。 先生からもたくさん褒めらた。  嬉しかった。 小学校を卒業すると、次は中学校へ通う事になった。 忠太は、学校というモノに心底驚いていた。 ほとんどお金が掛からなかったからだ。 しかし、毎日の様に学校に行くもんだから、狩りに出る数が減ってしまった。 今まで自給自足の生活をしていた忠太だったので、代わりに生活のため新聞配達の仕事を始めた。 毎朝学校に通う前に、町中の家々に新聞を配った。 一度も遅刻をする事も無く、一生懸命に働く姿勢に忠太の評判は良かった。 新聞配達に学校。忙しいが、毎日が新鮮でとても充実していた。 中学校を卒業する頃、忠太は22歳。 忠太は、町の役場に勤める事になった。 いわゆる公務員だ。 これは大出世だ。 町の皆んなからの推薦があったのが大きい。 毎日、真剣に勉学に向かう姿勢、一生懸命働いている姿を町の人は見ていた。 そして何より忠太のその生まれ育った境遇に皆、理解を持っていたからだ。
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