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一方その時間、あたし達の部屋の隅では…
「あー、おはようございますっす、カフェ美宙っす…本日の営業は終了させていただいたっす…なお明日以降の営業については…ししょー、これ何て読むんすか?…コホン、テンポスタッフのイアンリョコウチューにつき、未定となってるっす!ですのでまたのご来店ご連絡をお待ちしてますっす!…ししょー、これで大丈夫っすよね?」
冴香さんのスマートフォンからいつもと何ら変わらないハルキさんの声が流れていた
…棒読みでこそ無いけど…うーん…たぶんハルキさんは留守電のメッセージのつもりみたい…
いや、全部丸聞こえなんですが…
怖くて冴香さんの方を見られない…
微妙に震えているのは、寒いからではないことだけは確かだ
案の定…
「あ、もしもし冴香さん?温泉の方はどうで…」
やん♫あたしの彼氏で近い将来の旦那様の懐かしい声がするぅ〜♫
…真っ先に冴香さんの名前が出たのが癪に障る…
「描さん!どういうことなんですか!あれってウチの近くですよね?」
「ちょっと冴香ちゃん、代わって?あ、スピーカーなの?…ネコ、ハルちゃんとシイちゃんは無事なんでしょうね?ちょっと、聞いてる?もしもし?」
ハルさんのメッセージが終わると同時に、いつもと変わらずのほほんとした調子でこちらを気遣ってくれる猫さんの声が聞こえてきたと思ったら…
冴香さんと秋さんが一斉にスマートフォンに向けて叫び始め
ブツッ
不穏な音と共に、通話終了を告げる不穏な電子音を冴香さんのスマートフォンが奏でだした…
場を取り繕うべくアイスクリームにスプーンを挿そうとして…完食していたことを思い出した
この場から合法的に離脱する方法…か、か、かくなる上は!
ええっと…あたしもちょっとひとっ風呂浴びて来ようかな〜?あんな広いお風呂に浸かれる機会とかあんまりないですしぃ…
大浴場に逃げる!これしかない!
昨夜のウチから鴨居のハンガーに干しておいたバスタオルに手を伸ばす…うん、丁度良い感じに乾いてる!さすが全館空調!
じゃああたしちょっと行ってきますので…
そう言い残して退室しようとしたら
グイッ
浴衣の裾が引かれた
をい、誰だ、あたしの華麗なる脱出劇の邪魔をするのは…
視線が浴衣の裾からその先まで辿って行く
こちらもアイスクリームを完食したらしい、俯いたままの美優ちゃんに行き着いた
ええっと、美優ちゃん?お姉さん達にお茶でも淹れてあげちゃあどうかな?ほら、最近習ってたじゃない、冴香さんに!
「…優花さん、ズルいです…ナニ自分だけ逃げようとしてるんですか…」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
この喋り方、美優ちゃんもかなり怒ってる!
見るからに火事になっている秋さん冴香さん程ではないにしても…
と、ここで美優ちゃんが顔をあたしに向けた
しかもカフェ美宙の看板娘全開の、美少女の満面の笑顔で
「あたし達、姉妹じゃないですか❤」
…てめえそんなこと、露ほども思ってもないだろ…!
あ、忘れるところだった!冴香さん宛てにシイさんと泰子さんから時間差でメールが届いてたんだ
…正直、シイさんの名前を出すのには勇気がいったが…
茶色頭巾がどうだとか、銀の弾丸がどうだとか、公安や警察に犠牲者が出てるとか…ザマミロ!そう思いながら全員で情報共有する事にした
ついでにあたし達が何処にいるのか?自慢もしておいた
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