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ここのバスタオルは素晴らしい!
厚手で吸水性も抜群、ちょっと固くなった胸の尖端も隠せるし、おまけに冴香ちゃんやあたし達の下の翳りまで隠せる丈の長さなんだから!
…今度雑誌のインタビューでここの旅館を褒め倒しておくことにしよう、次回更にサービスしてもらえるだろうし
バスタオルを巻いた状態で脱衣場へ足を運ぶあたしに冴香ちゃん達から声が掛かったが、出口に一番近いのが動くのがShoottのルールだから
脱衣場の冷蔵庫を開ける
あれ?あたしのスポーツドリンクと冴香ちゃんの黒烏龍茶しかストックされてないじゃなーい!
インタビューで褒め倒すのは中止だ!…まあ小さな冷蔵庫だから仕方ないか…温度下げとこ…あ、冷凍機能あるぅ、じゃあそれに設定、と…やっぱキンキンに冷えてないとねー
しゃあない、エレベーターホールの自販機にいちご牛乳とフルーツ牛乳が売られてたはずだから、ちょっと足を伸ばすか…
仕方なくあたしはバスタオルをもう1枚巻いた上から浴衣を羽織り財布を取り出すと、貸切露天風呂から踏み出した
下着?ブラ?パンティ?そんなの付けてる暇はねえー、時は一時を急ぐのだ!
まあ、他に人がいるはず無いのでバスタオル姿でも良かったんだけど、そこはやっぱり乙女の嗜みってやつ?
エレベーターホールへは数歩で辿り着き、目当てのいちご牛乳とフルーツ牛乳を5本ずつ買うトコロまでは難なく事が進んだ
が、ここであたしはとんでもないミスを冒してしまった事に思い当たった
どうやって10本の牛乳瓶を運ぶ?
うーん…あのバカネコのバカが感染ったみたい…
反対に冴香ちゃんやあたしの気持ちが伝染れば良いのに…
と、横のエレベーターが到着する音がし、人影を三つ吐き出した
ふと自分が通路を塞いでいることに気付いたので、自販機の脇に身を避けた
三人の誰かが何か言葉を発する
どうも御礼を言われたような気がした
でもあたしの知ってる世界の公用語のどれでもなかった事、嗅いだことのない香りが何となく引っかかった
あ、ども…
こちらも返礼しておく、日本語なので残念ながら通じたのかは不明だ
三人があたしの目と鼻の先を通って行く
ふとあたしの中で違和感が膨れつつあった
でもそれが何に端を発するのかまでは、残念ながらわからなかった
取り当たってのあたしに与えられた命題は、眼の前の牛乳瓶の運搬方法なのだ
と、エレベーターがもう一台到着し、今度は旅館の従業員さんを二人吐き出してきた
「…兎に角さ、言葉が通じないのよ、日本語も英語もフランス語も!」
「そういやあたしのロシア語もドイツ語も通じなかったみたいだもんね~」
「それで勝手にエレベーターに乗って行っちゃうんだもん、どうやって止められるのよ!」
「あ、確かに!あの変わった色のローブに指一本触れなかったもんね!」
ホテルマンとしてはどうかと思うが、どうやらさっきあたしがすれ違った三人の噂話には違い無さそうだ
あたしの灰色の脳細胞…何よ、文句ある?これでも学生時代ネコに定期考査の成績負けたことないんだからね?が立体パズルのように、何やら組み合わせはじめた
一抹の不安とともに
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