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ち!一歩遅れたか!
今のはホテルのフロントの女の子の悲鳴だ
脱衣場前で何やら言い争う?声が聞こえてきていたんだけど
私は迷わず美優ちゃんをサウナに押し込み、言い聞かせる
妙なのが押し入って来たら、遠慮なく柄杓でそのとんでも無く熱いのをぶつけてやりなさい!元ラクロス部だったんでしょ?
勿論、さっき冷蔵庫からくすねた秋ちゃんのスポーツドリンク2本も押し付けた
時間が掛かったら、美優ちゃんが干涸らびちゃうからね
私の剣幕に美優ちゃんはカクカクと頷いて、柄杓を両手で握った
よし、こっちは大丈夫だろう…
私は風呂桶に隠していた相棒を手に取る
いつもの手順で四角い消音器を銃口に回し込む
描さんとコンビを組んで以来、数多の修羅場を共に潜り抜けてきたM&Pだけど…今日だけは正直美優ちゃんを守り切れる自信がない
頼りは…優花ちゃんだけか…大丈夫かな…M1877は持ち込んでたけど、銀の弾丸まではないはず
あとは、援軍が来る事だけど…優花ちゃんにそこまで知恵が回るかな…
私はバスタオルを身体に巻き付け、湯槽にしゃがみ込んだ
その間もシイちゃんから送られてきていたメールの内容を頭の中で反芻する
銀の弾丸でしか斃せないけど…火と水を畏れる、とか何とか…シイちゃんが何処からそんな色々な情報を手に入れたかは不明だけど
正直私も人外を相手にするのは初めてだから、心強い情報には違いない
と、脱衣場が開く音が夜明けの空に響き、異質な匂いが漂ってきて、露天風呂に満ちた
テレビで見たことのある狼人間のロックバンドと変わらない姿が三つ…
その中のひとつが私に、あとのふたつがサウナに其々向かって来る
が、水を嫌う習性と言うのは本当らしく、湯槽の私には中々近付いてこない
それを良いことに、私は相棒の銃爪を最初の弾倉が空になるまで引き続けた
普段は基本絶対に狙わない、頭部に全弾命中!実弾じゃない分、衝撃はかなりのはず…
どんなもんよ!?
自画自賛したのも束の間、一瞬怯ませる事しか出来ていない
私は湯槽に浮かべた洗面器から次の弾倉を取り出し、再度そいつを狙う!
視界の隅では残りの二体がサウナのドアをガタガタしている…早くこっちを片付けないと!…でもどうやって?
その瞬間だった
「うぉらー!あたしの家族に何しようとしてやがんだー!この狼もどきどもが!かかってこんかい!ぶっ飛ばしてやるぜ!!!」
良家の子女とは思えない雄叫びとともに、優花ちゃんがM1877を腰だめに構えて突入してきたのは…
全くあの子は…
しかし三体の注意がそちらに向いた
…まあ、結果的にグッドタイミング!
しかし風呂場で散弾銃を構える浴衣姿の美少女とは…
「冴香さん!潜って!」
思わずその言葉に従い、湯槽に潜りかけた瞬間
優花ちゃんのM1877が火を吹いていた
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