0人が本棚に入れています
本棚に追加
と、同時にヘリコプターのローターの音が聞こえてきた
ような気がした…
「冴ちゃん、伏せて!!」
今度は何やら拡声器で指示が飛んできた
ゆかりの声だったような…
はいはい、現状を打開出来るのなら従いますよ、と…
再度湯槽に潜りかけたあたしは、見た、いや見てしまった
空から文字通り銀色の雨が降り注ぎ、私が対峙していた狼もどきがそれをまともに受けて、溶け崩れていく様を…
風呂場に茶色のローブだけを残して
すぐに湯槽から頭を出し、サウナの方を見やる
美優ちゃんは…この中で唯一乙女と言える存在は、無事なの?
ん?狼もどきが苦しんでいる?それもくしゃみを連発している?
「おりゃあー!!あたしの猫さん特製の香辛料弾の威力、思い知れや!!」
叫びながらもM1877を回し、次々にその香辛料弾?を狼もどきの頭部に集弾している…中身はアレだろう、胡椒と唐辛子…
やれば出来るじゃないの…後でちょっとお説教しなきゃだけど…誰が優花ちゃんのだ、誰が
と、今度は
「優花ちゃん、冴ちゃん、行くわよ!!」
また頭上から拡声器越しにゆかりの声が聞こえたような、気がした
と、優花ちゃんへは何かクラシカルな長めの物が、私には予備弾倉がひとつ、上空のヘリから降ってきた
私を狙ったかのようなその軌道に、難なくM&Pの予備弾倉が左手に納まる
同様に優花ちゃんの右手にМ870が納まるのが見えた
こういう時、ゆかりや泰子と同じ銃を使っていれば助かる
そしてパッと見ただけで中身がわかるくらいに、周囲が明るくなって来ていた
銀の弾丸が込められているのがわかるくらいに
朝日が上り出したのだ
私は躊躇する事なく、弾倉を入れ替える
これまで何度も繰り返してきた動作だ、目を瞑っていても出来るレベルには
遊底を引いて初弾を薬室に送り込む、問題なし
私は毛皮の塊になって咳とくしゃみを連発している狼もどき二体へと、何の迷いもなく銃爪を引いた、引き続けた
天の恵み?の弾倉が空になって、М&Pの遊底が下がって動かなくなるまで
殆ど同時にM870の轟音が立て続けに響く
殊更ゆっくりと歩を進めながら、優花ちゃんが銃爪を引きポンプアクションを行ない
「地獄で会おうぜ、Baby…」
優花ちゃんはターミネーターじゃないでしょ…
ほぼ溶け崩れている狼もどきにそう言葉を掛けながら、最後の1弾ずつを撃ち込んでいた
少々オーバーキル気味な気がする
銀の弾丸の使用量と使用料、露天風呂の修理代金、さっきの優花ちゃんの発言に対するクレーム、飲物を買いに行ってくれた秋ちゃんの安否などで、私は頭が痛くなった
が、何か忘れているような…
「冴香さん、終わりました…?も、もう無理…限界ですぅ…」
サウナ小屋からよろめきながら出て来た末妹の姿に、私は何を忘れていたのかを思い出していた
どうも思っていたよりも時間と手間を掛けてしまっていたみたい
取り敢えず水風呂に放り込んで身体を冷やしてあげるべきなのか、秋ちゃんのスポーツドリンクの残りを無理矢理にでも飲ませるべきなのか…
私、北村冴香の考え事悩み事のタネは尽きる事がなさそうだった
最初のコメントを投稿しよう!