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女のプライドと戦い
「あっちゃー、これはちょっとバラ撒き過ぎたかな〜?ま、いっか!諸々の弁済とか補償は公安がやる契約だし、あたし達は依頼を片付けただけだもん」
高度をギリギリまで下げたヘリから、身軽に降りてきたのは私の同期で長年の親友のゆかりと泰子だった
ゆかりは濃紺のスカートスーツ、ちょっと短すぎないか?、泰子は同色のパンツタイプで職場から直行してくれたのがわかる
ただ、二人とも特に変わった銃器、要は狙撃銃の類だ、を使っていた様子もない。って事は、私と同じМ&Pで当ててた?…何か負けた気がしなくもないけど、今の私は花嫁修行中の一般人だから、そこは仕方がない。
ただ二人揃って大きめなボストンバッグを肩から下げているのはどういう事かな?
ん?ヘリがそのまま夜明けの空を去って行く?あいつらは連れて帰らないの?
「ゆかちゃん、風でヘリが揺れたからしょうがない…って事にしようよ~、タイムカード捺せないから残業手当ももらえないんだしー」
「まあ、こんな高級旅館に招待してくれた先生に感謝ってところかな?あ、冴ちゃんおはよ♫」
「場所がアレだけど、冴ちゃんおはよ♫唯一の乙女の美優ちゃんは大丈夫?」
…あんたら、色々と言いたい事は在庫が余るくらいにあるんだけど
でもまあ、二人が来てくれなかったら正直皆危なかったのは事実、取り敢えずお礼は言わなきゃ
ゆかりに泰子、本当助かった!グッドタイミングだったわよ!
「ふふん、もっと感謝してくれても良いのよ?例えば先生を譲ってくれるとかね?」
…こ、こいつ…残弾があったら間違いなく蜂の巣にしてやるのに…
「ゆかちゃんそれはちょっと図々し過ぎるお願いよ?」
おお!泰子にしてはまともな事言うじゃない!この奥ゆかしさ、ゆかりにも見習ってほしい
「せめて一週間ばかり先生と3人きりで過ごさせてもらうとかくらいにしないと!」
…前言撤回…こいつも同類だ…
「そっかー?命の恩人だからそれくらい頼んでも罰は当たらないと思うんだけどな…ま、いっか…冴ちゃん、あたし達チェックインしてくるから、後始末よろしくね?」
「そーそー!ボチボチ公安か地元の警察署から事情聴取来るだろうから、部屋に引っ込んだ方が良いわよ〜?そっちは休暇中なんだし」
ゆかりと泰子がそう言い残して、後ろ手をヒラヒラさせて露天風呂から出ていく
…確かに…幾ら何でもバスタオル巻いただけの格好を描さん以外に見せたくないし?それに戻って来ない秋ちゃんも心配だし
優花ちゃん、美優ちゃん、とっとと引き上げるわよ?
そう声を掛けて、サウナで逆上せた美優ちゃんに肩を貸して脱衣場に運ぶ
ん?優花ちゃんどうしたの?そんな固まったままで?タイルの破片でも踏んで怪我でもした?
露天風呂に立ち尽くしたままで肩を震わせている妹分の背中に何気なく声を掛けた
「…だって…」
は?何が「だって」なの?
そこで私は優花ちゃんが何を言わんとしているのか?理解した
「あたしだって乙女ですぅ!!!!!!!!!」
間髪を入れず、日本で有数の温泉街に、乙女の悲痛な絶叫が響き渡った
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