花火で一杯❤(そんなテはない)

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隣で優花さんが気持ち良さそうに、微妙に締まりの無い笑顔で、寝息を立てている。かろうじて涎は出ていないようだ きっと夢の中で猫さんに褒められるか、若しくはそれ以上にあたし達が嬉しいことを、されているからなんだろう でも…最上階に縁がある人生になっちゃったな〜 あたしはつい笑みを溢してしまう 猫さんと再会出来た勤め先病院の緩和ケア病棟と言い、この高級温泉旅館と言い… ただ、ここに猫さんと二人っきりだったらもっと嬉しいけど …いや、二人っきりなら間違いなくあたしは猫さんの布団に潜り込んで、オトナのオンナにしてもらうようにお願いしているはず 想像しただけで両頬がポッポしてくる… どうも変に目が冴えてしまったようだ あたしは寝ることを素直に諦めて、横になっていた布団から窓際の月光挿す籐椅子へと移動する …勿論移動の際に優花さんを踏まないよう、細心の注意は払って いつも隣で過ごしているので、優花さんの寝相の悪さは身に沁みてわかっているつもりだ 備え付け冷蔵庫から持ち込みのミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、これまた備え付けのグラスに注ぎ、ひと息に半分ほど飲み干す 部屋の窓から見える下弦の三日月が少しずつ西に傾きだし、東の空が少しだけ白んで来ている 夜明けが近い 全館完全空調の高級温泉旅館とは言え明け方はやっぱり冷えるので、浴衣の上から丹前を羽織る …優花さんを踏まないように移動したのは言うまでもない 籐椅子に深く座り直して思い出をなぞる 一年前の夏には考えられなかったことだ …まさかまさかの、夢だった看護士の仕事を2年足らずで辞して、今やカフェの共同経営者…いや、押し掛け女房になっているとは… あ、いや、家事は殆ど猫さんと冴香さんに任せっきりじゃ「押し掛け女房」は名乗れない? でも最近は「家族」の分の食器洗いと、そうそう、麦茶を沸かす仕事を任せてもらっている! 冴香さんが今度は緑茶の美味しい淹れ方を教えてくれるらしい、たぶん猫さん好みの味だろうけど 看護士を続けていたら?知ることも出来なかった世界が見えて来ているのは、正直楽しい、かも 居場所を言わない事を念頭に、かつての学友とは交流を細々と続けている まあ、月1の近況報告くらいだが ビーチでの恐怖体験以来、あたしは完全に行方不明扱いになっている、はず 家族にも親友達にも厳重に口留めしてあるから大丈夫だろう ちょっと前までの猫さんと同じに でも… こんなラッキーが続くものなんだろうか… 「家族」6人プラス秋さんの七人で引いた福引で、まさかの温泉旅行ペア招待券を2枚とも引いてしまうなんてことが…しかも部屋がロイヤルスイートだなんて、ねぇ
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