友達の家

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 彩芽のお母さんは私を快く招いてくれたし、彩芽も楽しそうにはしていたんだけど、何か凄く気を使われているような感じがした。  彩芽のお母さんは、お菓子、ケーキ、ジュース等を何度も持ってきてくれ、時々お母さんも話に加わって来てくれてた。  お母さんの話はネタの様に面白いし、彩芽も色々と興味深い話を聞かせてくれたんだけど、聞けば聞くほど私が記憶として持っていることと、彩芽が印象深く覚えていることに違いを感じてしまう。  何か根本的に感性が違うような、そんな感じを抱かされてしまうのだ。  彩芽は私と同じで小学校の時から英語とピアノを習っていた。私は今は習ってはいないけど、共通の話題として、それなりには会話にはなった。なったんだけど、何か話が盛り上がらない。  例えば、先生の口癖とか、発表会での生徒たちの面白出来事とか、ピアノ以外でのエピソードとか。彩芽はどちらかと言うと、そちらの記憶が強いようなんだけど、私は先生の名前や習った曲、練習での難しかったこと等は憶えているのだけど、人間関係のエピソードは全く覚えてはいない。  小学校での出来事について話した時もそうだった。  彩芽は、小学校の時に友達同士で流行っていたことの印象が強く残っているのだけど、私が持っている記憶はその時に一般的に世間で流行っていたことばかり。  彩芽の机の上には小さかった頃の家族の写真があり、私が望むと子供の頃の写真を見せて、思い出を話してくれたのだけど、考えてみると私の持っている写真と言えば、最近の研究室でのものばかり。幾つかある小さかった頃の写真も、思い出とは結び付かない。
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