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「なずなさん、二人きりにしてくれてありがとうございます」
「何、そんなに畏まって。やめてよ、離れても…たまには文書いてね、ちゃんと読むから」
早くも瞳を潤ませるなずなに、「はい」と大きく頷く。ゆっくりと立ち上がり、隣に並ぶとその姿は昔よりもだいぶ小さく感じられた。
なずなが小さくなったわけではない。まだ十五歳だった自分が年を重ねたのだ。二十を迎えた時に『沖田さんもその位だったな、初めて会った時。テツくんより、全然子どもだったよ』と、もう会えない想いに堪えながら、物悲し気に微笑んでいたのを覚えている。
そうして自分はこれからも年を重ねていくのだ。沖田さんの年を超え、近藤局長の年を超え、いずれは土方さんの年齢も超えていく。
自分だけが先の時代を生きる苦しみを、この二年、なずなとは分かち合えていた。何も言わなくても、お互いどこかで感じ取れていたと思う。
その日々も今日で終わる。
『ここまで』を受け入れるのに、だいぶ年月が経ってしまった。正確にはまだ全てを受け入れられてはいない。
こんな話があるかと悔しくて発狂しそうな時もある。
けど、土方隊長は立ち止まる事が大嫌いだった。今の自分を見たら『前を向け』と叱られるだろう。
よくやった、よく生き抜いたと言って貰える生き方をしたいと、ようやく前を向けたのだ。
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