《scene.3》

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   五年前。  目覚ましい技術の進歩で世界各国の経済が成長していく中、この国はそれに大きく遅れをとっていた。  当初は勤勉さと高い技術力を誇り世界をリードしていたが、次第にその成長速度が鈍っていった。  原因は、ひたすらに優しい国民性だった。  少子化の進む高齢化社会の中この国では別れの機会が増え、「誰かを失う」という寂しさや悲しみに触れる事が多くなった。  もともと心理的な影響を受けやすかったこの国の人々は、そんな機会の度、著しく生産性が落ちた。 「あなたがいなくて寂しいと思う」  所謂「I miss you」の感情が、この国の経済成長の妨げになっていた。  そこで国は、人工知能を埋め込んだ人型を国内の生活圏に仕組みを法制し、経済成長を促す事にした。  ただしその人型は、愛や情を感じる回路を敢えて鈍く設定し、特に誰かを失った時などの「I miss you」の感情は学習しないようプログラミングされた。  「I miss you」に影響を受けなくなったこの国の経済は、以降の数年で大きく成長することとなった。
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