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五年前。
目覚ましい技術の進歩で世界各国の経済が成長していく中、この国はそれに大きく遅れをとっていた。
当初は勤勉さと高い技術力を誇り世界をリードしていたが、次第にその成長速度が鈍っていった。
原因は、ひたすらに優しい国民性だった。
少子化の進む高齢化社会の中この国では別れの機会が増え、「誰かを失う」という寂しさや悲しみに触れる事が多くなった。
もともと心理的な影響を受けやすかったこの国の人々は、そんな機会の度、著しく生産性が落ちた。
「あなたがいなくて寂しいと思う」
所謂「I miss you」の感情が、この国の経済成長の妨げになっていた。
そこで国は、人工知能を埋め込んだ人型を国内の生活圏に意図的に紛れ込ませる仕組みを法制し、経済成長を促す事にした。
ただしその人型は、愛や情を感じる回路を敢えて鈍く設定し、特に誰かを失った時などの「I miss you」の感情は学習しないようプログラミングされた。
「I miss you」に影響を受けなくなったこの国の経済は、以降の数年で大きく成長することとなった。
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