《scene.3》

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 結果が表れ始めた事で、人型との共存に当初不安を抱いていた国民も、許容し理解を示した。  「I miss you」は成長に不要。  「I miss you」は「×」  その意識は、この五年で人々の常識になりつつある。  国内中の生活圏に放たれた人型達は、その頭文字から「ximy」(ジミー)と俗称され呼ばれるようになるが、普通に生活する中で彼ら「ximy」と人間は殆ど見分けがつかなかった。  ◇  アトリエの窓から、沈む間際の陽の残光が海と夜空を縁取るのが見えた。  好きだ、と僕が伝えてからそのぬくもりが散るまでに、いつも数十分の時間が要る。  少しづつ身体を揺すり始め俯く顔を上げて笑いかけてくれるまで、僕は毎回ハンナさんを見つめ続け、自分の枯れない気持ちを反芻する。  僕のハンナさんへの好意は、愛に違いない。  それを初めて彼女に伝えた時、ハンナさんはあからさまに、見せる感情を。  何となく、僕ははじめから分かっていたのかもしれない。  ハンナさんは、寄ってくれる子ども達に「寂しく感じるか」を訊ねていた。確認していた。そして今日の昼間のように、その子達が寂しいという感情を抱く事に、彼女は安堵していた。  きっと、ハンナさんは「ximy」なのだ。  
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