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僕は鞄の書類を仕舞ってPCに向かい、ximyについて検索をする。
これから少しづつ、ximyについて知って行こうと思った。
どうしたらハンナさんの為になるのか。
どうすれば、ximyとちゃんと心を通わせられるのか、と。
「……倉田ぁ。お前、ximyに興味あんの?」
堀田さんが、少し神妙な顔付きになって椅子ごと僕に寄って訊ねてきた。
僕はひとつ咳払いをして、靄のかかったような思考を飛ばす。
疲れたかな。さっきからハンナさんの事を考えていると、ぼうっとしてくる。
「……ハンナさんの力になりたいんです。社長も堀田さんも、彼女のアートをもっと知った方がいいですよ。彼女の作り出す世界は、ずっと枯れないんですよ。だから、きっと、届くんだ。人間にも、……ximy、にも、ちゃ、んと、あ、い、を、つ、た、え……
……
…
「あー!社長!倉田また充電切れ!止まっちまってるよ-!」
「……またかよ。最近あんまりもたなくなっちゃったなあ……。ほら、堀田そっち持て。うん、そのコネクタ引っ張って、そう」
「よいしょっ、っと。充電開始、これでよし」
「惚気始めたと思ったら、いきなりプツン、だもんな」
「ですね。倉田はもう寿命じゃないですかー?」
「あー。もう三年か……。でも買い換えの時期には少し早くねえか」
「社長が趣味設定に『サーフィン』なんか入力するからですよ。海風とか潮とかできっとどこかバグっちまったんじゃないっすか?」
「この街で暮らすならサーフィンくらいやらせてえじゃねえか。でもなあ、最近自分を人間だって思い込むようになってたからなあ」
「恋愛しそうになってて、ちょっと面白そうでしたけどね。まあそれもバグなんでしょうし、最近充電切れがちでやっぱりヤバいっすよ」
「そうだよなあ。良い奴だったんだけどな。仕方ない。おい堀田、最新号のximyカタログ持ってきてくれ」
「はーい。次はギャルみたいな人型はどうですう?」
◇
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