《scene.5》

3/5
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 僕は鞄の書類を仕舞ってPCに向かい、ximyについて検索をする。  これから少しづつ、ximyについて知って行こうと思った。  どうしたらハンナさんの為になるのか。  どうすれば、ximyとちゃんと心を通わせられるのか、と。 「……倉田ぁ。お前、ximyに興味あんの?」  堀田さんが、少し神妙な顔付きになって椅子ごと僕に寄って訊ねてきた。  僕はひとつ咳払いをして、靄のかかったような思考を飛ばす。  疲れたかな。さっきからハンナさんの事を考えていると、ぼうっとしてくる。 「……ハンナさんの力になりたいんです。社長も堀田さんも、彼女のアートをもっと知った方がいいですよ。彼女の作り出す世界は、ずっと枯れないんですよ。だから、きっと、届くんだ。人間にも、……ximy、にも、ちゃ、んと、あ、い、を、つ、た、え……  ……  … 「あー!社長!倉田また充電切れ!止まっちまってるよ-!」 「……またかよ。最近あんまりもたなくなっちゃったなあ……。ほら、堀田そっち持て。うん、そのコネクタ引っ張って、そう」 「よいしょっ、っと。充電開始、これでよし」 「惚気始めたと思ったら、いきなりプツン、だもんな」 「ですね。倉田はもう寿命じゃないですかー?」 「あー。もう三年か……。でも買い換えの時期には少し早くねえか」 「社長が趣味設定に『サーフィン』なんか入力するからですよ。海風とか潮とかできっとどこかバグっちまったんじゃないっすか?」 「この街で暮らすならサーフィンくらいやらせてえじゃねえか。でもなあ、最近自分をなってたからなあ」 「恋愛しそうになってて、ちょっと面白そうでしたけどね。まあそれもバグなんでしょうし、最近充電切れがちでやっぱりヤバいっすよ」 「そうだよなあ。良い奴だったんだけどな。仕方ない。おい堀田、最新号のximyカタログ持ってきてくれ」 「はーい。次はギャルみたいな人型はどうですう?」  ◇  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!