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「けんくらさん、その小さな端材の曲線、すごくいいね」
ハンナさんは、普段からあまり難しい言葉は使わない。今日も僕が持ってきた木材の端材を手に取ると、端的にそんな感想を放った。
空が紫から紺色に色を変え始めたあたりで、ハンナさんはアトリエに入った。
置いておいた荷物を渡すと、早速それで何かアート作品の製作に取りかかるらしい。
「じゅんくんとそのお友達にね、キーホルダーを作って贈ろうかなって」
くるくると端材を色々な角度で見回すと、散らかった床から鉛筆と彫刻刀を手に取った。言葉の使い方も思いのままの行動も、彼女は常に天然色。小さな子にああも寄り添えるのは、そんなハンナさんだから出来る事なのだと思う。
左右対称の端材を真ん中から二つに切り分け、鉛筆で表面に花のデザインを対に描いた。
側面に「カモミール」と記し、少し眺めてからひとつ頷いて、キーホルダーのチャームになる部分の加工を始めた。
「この花はね、今日の気持ちのまま、枯れないの」
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