彼がくれた薬がただのラムネだった話

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「なんだよ、まだ文句あんのかよ。」 彼は不満そうな顔をする。 「ううん、そうじゃなくて...。えっと。」 なんていえばいいんだろう。言葉が出てこない。 ありがとう?それはなんだか違う気がした。そうだ。 「今度は、私がお金払うから。」 彼は微笑んでいた。 会計を終わらせて二人で外に出る。辺りはすでに暗くなっていた。 「じゃ。」彼は去っていく。 もう二人が会うことはないだろう。 遠ざかっていく彼の背中に心の中で礼を言う。 「なんか、ありがとう。」 彼の姿を見送ったあと、帰りのバスの時間を調べようとスマホを取り出した。スマホの画面に空が映る。思わず見上げると、満天の星が夜空を埋め尽くしていた。 すごく綺麗だった。 空を見上げたのなんて久しぶりだ。もしあの夜、彼と出会っていなかったら今頃私どうしてたかな。考えるだけでぞっとする。 今夜はぐっすり眠れればいいな──。 《完》
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