彼がくれた薬がただのラムネだった話

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薬...?急に何の話だろう。 「まあ、お医者さんとかから処方されたものなら。」 「じゃあはい。これ君にあげるよ。」 彼が差しだしたのは透明な袋に入った三粒の錠剤だった。 「なんですか?これ。」 「薬だよ。君を悲しみから解放する。」 悲しみから解放する...? なんだか怪しそうだ。もらってはいけないのはわかっていた。 なのに、気づけば私はその袋を受け取っていた。 「これだけで悲しみから解放されるんですか?」 「うん。そうだよ。三粒あるから、一粒ずつ三食それぞれの食後に飲んでね。飲むなら必ず三粒とも飲んでね。」というと彼は席を立って店を出て行ってしまった。 なるほど、見た目は確かに本物の薬っぽい。 だけどさすがに怪しすぎる。 だって、居酒屋で急に出会ったスーツの男に渡された謎の薬だ。 飲んではいけないよと私の中の理性が必死に止めに入ってる。 さすがに飲まないよ。 そろそろ会計を済ませようとレジに行くと、 「お会計なら先ほど紺のスーツの男性が払っていかれましたよ。」と言われた。 あの人いったい何者なんだろう。 ──次の日の朝── 今日が休日でよかった。平日だったら、ろくに仕事に行く気にはなれなかっただろう。朝食はいいや。 あ、そうだ。朝食で思い出した。昨日の薬のことだ。 私、意外とちゃんと傷ついてるみたいだ。 あの薬を探そうとしてる。
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