彼がくれた薬がただのラムネだった話

4/7
前へ
/7ページ
次へ
あった。床に落ちている少しシワのついたジャケットの中に入っていた。 そうだ。昨日帰ってきてそのままベッドで寝落ちしたんだ。その後途中で起きてスーツを脱ぎ捨てたんだっけ。酔いが回っていたのでしっかりとは思い出せない。 とりあえずご飯は食べよう。 外に出る気力はなかったから、簡単に自炊をした。 久しぶりに食べる自分のご飯はなんだかおいしく感じた。 ご飯はすぐに食べ終わった。 どうしよう。 薬飲んでみようかな。いや、でもさすがに危険すぎる。 でも悩んでるってことは飲みたいと思ってる自分がいるということだ。 一粒飲んでみよう。 もし飲んで死んでしまったら、あの人も少しは別れたことを後悔してくれるかな。そんなメンヘラ心を持ちながら。 薬は普通のものとは違う味がした。 甘かった。お菓子みたいな甘さ。 これ、私どうなるんだろう。今のところ何も変化はない。 三粒飲んだら何か変わるのかも。 結局何も変わらなかった。 変わったことといえばご飯を三食しっかり食べていつもより健康的な一日を過ごせたことだろうか。 明日、またあの居酒屋に行ってみよう。 またお酒で紛らわそうと思ったのか。いやそうでは無い。 あの男に聞きたかったからだ。 この薬はなんなのか。私に効果はちゃんと出たのか。 ここまで何もないってことはないだろう。 明らかに怪しいのに何もない。 逆におかしな話ではないか。 それともただの普通の薬だったのだろうか。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加