彼がくれた薬がただのラムネだった話

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まだ気づいてないってどういうこと...? 「あれ薬じゃなくてただのラムネだよ。」 は...?ラムネ? 私の反応を見ると彼はけらけらと笑い出した。 「いや、食べても気づかないとか鈍感なの?てか馬鹿だろ。」 失望した。こんなしょうもない奴だったのか。 私の中で何かがプツンと切れる音がした。 「何?傷ついてる私のことからかいたかっただけ?意味わかんない。それなら身内でやってよ。私がどれだけ傷ついてたのか全然わかってないんだね。ほんと最低!」 私は赤の他人にぶつけられるありったけの罵声を浴びせた。 それなのに彼は全く表情をかえず笑っていた。 「なんで笑ってるの。」 「俺さ、薬渡すときに言ったよね。一粒食べるなら三粒必ず食べること。食後に食べろって。」 それが何の関係があるのか。ただのラムネなら別にいつ食べても変わらないだろう。 「あんた俺がラムネあげなかったら食事なんてする気にならなかっただろ。」 確かにそれはそうだ。薬のこと思い出してご飯食べようとしたんだっけ。 食後、つまり食事をしなきゃ薬を飲むことはできない。なるほど。 「自分を振るような男のために体調崩すなんて情けなさすぎるだろ。ごはんぐらいちゃんと食べろっていう俺なりの親切心だよ。」 そういうと彼はまた行ってしまう。 「あ、ちょっと待って!」 思ったより大きな声が出た。周りのお客さんたちの視線を集める。 それでも気にせずに私はレジにいる彼のもとに駆けつけた。
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