彼がくれた薬がただのラムネだった話

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失恋した。 もうこれで何回目かな。 毎回私が振られる。 重い。飽きた。つまらない。 今までたくさん傷ついてきたし、もう恋なんてしないって決めてたのに。 なんでまた恋しちゃったんだろう。 「いらっしゃいませ。」 居酒屋の中は相変わらずにぎわっていた。 私は毎回失恋した悲しみをお酒で紛らわす。 もう来ないと決めたのに。 結局またいつもの居酒屋に来てしまった。 「カウンター座られますか?」 「はい。」 案内されたのはいつも座るカウンター席だった。 この居酒屋は仕事帰りのサラリーマンの集団や女友達で来る人が多い。 そのためカウンターはいつも比較的空いている。 とりあえずビールを注文した。 ビールはすぐにやって来た。 一口飲めばアルコールが一瞬で凍り付いた体中に染み渡る。 「やけ酒ですか?」 私に向けたものではないと分かっていたけど、振り返ってみた。 一人の男性が私の後ろで微笑んでいた。 こんなふうに話しかけられるのは初めてで、 「はい...。」と苦笑いしかできなかった。 「隣いいですか?話聴きたいです。」 私は断ろうと思った。でも彼はとっくに私と同じビールを店員に注文していた。なんとなく気さくというか強引というか。 「それで、何があったんですか?」 さっきはちゃんと見てなかったけど、よく見るとすごくかっこいい人だ。
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