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「……他人に触れた時、自分と相手にバチッと静電気が走ることがあるでしょ?
それと同じ。
不意に触ったり触られてたりすると、この力はその箇所を通じで伝染するみたい。
僕が触れている時だけは、触られた相手も一時的に付喪神を認識できるんだ」
なるほど、と俺は思う。
だから月影は、普段から皆を避けていたのだ。
他人に触っちまうことを防ぐために。
この力を隠し通し、普通の人間っぽく生活していくために。
だけど、今回、月影は俺を庇った。
そのせいで水本に詰め寄られ、結果、こんな力があることが俺たちにバレてしまった。
いや、でも、と思う。
本当にバレたくなかったら、そもそも月影は、俺を庇ったりしなかったんじゃないか?
あの時俺を庇ったって、こいつにはなんのメリットもないはずだ。
なのにこいつは、それでもあの時、俺の味方をしてくれた。
ほとんど話したこともない俺のために、バレるリスクだってあるのに、それでもこいつは、俺のために手を上げて、俺を庇ってくれた。
――普段はツンツンしておるが、本当は優しい奴なんじゃ。
先の掃除箱の言葉が頭にこだまし、目の奥が熱くなる。
次の瞬間、俺は思わず、月影を強くと抱きしめていた。
「なんだよおまえ!
おまえチョー良い奴じゃん!!
良い奴すぎてヤベぇんだけど!!なぁ!!」
「ちょっ……いきなり何?!」
月影は慌てた様子で俺を振り払う。
瞬間、辺りをこだましていた笑い声はフッと消えた。
「……もう分かったでしょ?今回の真相は。
だからもう、帰ろう。日も暮れてきたし」
ふと気がつき、時計を見る。
時刻は四時半を回ろうとしていた。
そして俺はハッとする。俺は鈴木達とゲームをする約束だったのだ。
「やべっ、間に合わねぇ!」
俺はランドセルをかけ直すと、すぐさま扉へと走った。
が、月影にちゃんと感謝を伝えていなかったことに気がつき、振り返る。
「なぁ、月影、おまえのこと、礼って呼んでいいか?!」
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