給食袋はなぜ無くなったのか

9/13
前へ
/68ページ
次へ
水本の言葉に、月影はきゅっと唇を閉じたまま、何も答えなかった。 そんな彼に、水本はたたみかける。 「なのになぜ、月影くんは、ボール箱が教室になかったことを知っていたの? もしかして」 そして一呼吸置いた後に、告げる。 「この教室に、監視カメラでも仕掛けているの?だから知っていたの?」 「……は?」 水本のあまりに突拍子もない発言に、月影は思わず声を漏らす。 と同時に、俺も目を見開いた。 確かに、なぜ月影がボール箱の移動を知っていたのかは疑問だが、だからって監視カメラというのは、発想がぶっとびすぎている。 真面目な水本から出た言葉とは、到底思えない。 しかし、水本は至って真剣そうな表情だ。冗談を言っている雰囲気は微塵もない。 それどころか、どこか切羽詰まったような気迫も感じる。 「ねぇ。月影くん。正直に答えて。 もしあなたが、こっそり監視カメラをクラスに設置しているのだとしたら、私、あなたに協力してほしいことがあるの!」 そう言いながら水本は、突然月影の手を両手で握りしめた。 そのらしくない行動に、俺は息を飲む。と同時に、月影は「やめて、だめだ!」と小さく叫ぶ。 何が「だめだ」なのか。 俺はその答えをすぐに知ることになる。 水本が月影の手を掴んだ直後、水本は一瞬、目を見開く。 そして急に「何、これ!!!!」と彼以上に叫び声を上げた。 と同時に、掴んでいた手で月影を突き放ばす。 月影は椅子に座った状態だったため、そのまま後方に倒れていく。 瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。 月影が床に身体を打ち付けるより先に、俺は廊下から教室内に飛び込み、奴の身体を抱き止めた。 「おい、大丈夫か、月影?!」 「だめだって!!」 再び月影が声を上げる。が、その直後、無数の声が俺の耳に飛び込んできた。 「あららぁ。礼くん、身体を触れられちゃいましたなぁ」 「月影 礼のヒミツ、クラスメイトにバレちゃった~!!」 「でも、大丈夫だよ、礼。詩織も大我も、いいやつらだから」 教室内に響く、無数の声。俺は思わず辺りを見回す。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加