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水本の言葉に、月影はきゅっと唇を閉じたまま、何も答えなかった。
そんな彼に、水本はたたみかける。
「なのになぜ、月影くんは、ボール箱が教室になかったことを知っていたの?
もしかして」
そして一呼吸置いた後に、告げる。
「この教室に、監視カメラでも仕掛けているの?だから知っていたの?」
「……は?」
水本のあまりに突拍子もない発言に、月影は思わず声を漏らす。
と同時に、俺も目を見開いた。
確かに、なぜ月影がボール箱の移動を知っていたのかは疑問だが、だからって監視カメラというのは、発想がぶっとびすぎている。
真面目な水本から出た言葉とは、到底思えない。
しかし、水本は至って真剣そうな表情だ。冗談を言っている雰囲気は微塵もない。
それどころか、どこか切羽詰まったような気迫も感じる。
「ねぇ。月影くん。正直に答えて。
もしあなたが、こっそり監視カメラをクラスに設置しているのだとしたら、私、あなたに協力してほしいことがあるの!」
そう言いながら水本は、突然月影の手を両手で握りしめた。
そのらしくない行動に、俺は息を飲む。と同時に、月影は「やめて、だめだ!」と小さく叫ぶ。
何が「だめだ」なのか。
俺はその答えをすぐに知ることになる。
水本が月影の手を掴んだ直後、水本は一瞬、目を見開く。
そして急に「何、これ!!!!」と彼以上に叫び声を上げた。
と同時に、掴んでいた手で月影を突き放ばす。
月影は椅子に座った状態だったため、そのまま後方に倒れていく。
瞬間、俺の身体は勝手に動いていた。
月影が床に身体を打ち付けるより先に、俺は廊下から教室内に飛び込み、奴の身体を抱き止めた。
「おい、大丈夫か、月影?!」
「だめだって!!」
再び月影が声を上げる。が、その直後、無数の声が俺の耳に飛び込んできた。
「あららぁ。礼くん、身体を触れられちゃいましたなぁ」
「月影 礼のヒミツ、クラスメイトにバレちゃった~!!」
「でも、大丈夫だよ、礼。詩織も大我も、いいやつらだから」
教室内に響く、無数の声。俺は思わず辺りを見回す。
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