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掃除箱が尋ねると、水本がおそるおそる口を開く。
「あなたたちから、聞いたからってこと?」
「そうじゃ。大我が学級裁判にかけられて、一人立たされた時、儂らはみな言ったんじゃ。
大我は犯人ではない。給食袋は隠されたわけではない、と。
だから礼は、皆の前で発言したんじゃ。皆に真実を伝えるために」
「つまり月影くんは、最初から答えを知っていた。
けれど、『付喪神に教えてもらった』なんて言っても信じてもらえるはずがないから、自分が推理をした風を装ったってこと?」
水本が月影を見つめる。が、月影は答えない。
代わりに掃除箱が、再び口を開いた。
「礼はな。
昔から付喪神を認識することができたんじゃ。
幼き頃は、人前で我々の仲間と話したりもしておったらしい。
しかし、それゆえ、周りに変な奴だと思われ、礼自身もバケモノ扱いされてきた。
だから、その能力を隠すため、普通の人間と同じように振る舞ってきたんじゃよ」
「余計なこと、言わなくて良いから」
月影が吐き捨てる。だけど、掃除箱はフフッと笑みをこぼした後、続けた。
「普段はツンツンしておるが、本当は優しい奴なんじゃ。
だからこそ、大我が犯人に仕立て上げられる様を見過ごすことができなかったんじゃよ」
「……それで、わざわざ俺を庇うために、みんなの前で発言したってのかよ」
俺は月影の方を見る。が、彼はそっぽを向いてしまった。
掃除箱は再び彼に語りかける。
「……なぁ、礼。前の学校では色々あっただろうが、ここでは、少なくともこの二人の前では、そこまで肩肘を張る必要はない。
儂は今まで、このクラスで、色んな子ども達を見てきた。
じゃから、ある程度、『人を見る目』は持っておる。
そんな儂が断言する。水本詩織と火村大我は、信頼に値する人間じゃと、な」
人を見る目って……、おまえ、目、ないじゃん。なんて思ったけれど、俺は黙っていた。
その時、水本が落ち着きを取り戻した様子で尋ねる。
「ねぇ、月影くん。その『付喪神を見る力』って、あなたに触れている人間にもその効果が伝染するの?」
今みたいに、と付け加えると、月影は諦めたように小さく頷く。
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