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教えて! AIくん
その夜。パパとママがリビングでテレビを見ている間に、こっそりパパの部屋に入る。パパのパソコンに入っているあるアプリを使うために。
『こんにちは! AIくんです。気軽にお話ししてね!』
立ち上がってすぐ、そんな文字が表示された。
そのアプリの名前は『AIくん』。チャット形式で、質問に答えてくれたり、相談に乗ってくれるの。なんでパパのパソコンに入っているのかは知らないけど(多分、仕事で使ってるんだろうな)これを見付けてから、何度もこっそり使ってる。バレないように、使った後は質問ごとちゃんと消してるよ!
さっそく質問を入力する。
『気になる人がいるの
彼との運命的な出会い方を教えて!
できるだけたくさん!』
『承知しました』
短い返事の後、長い文章の返事がきた。
『お答えいたします
① 飛行機や新幹線で隣同士になって、一目惚れをする
② 神社で書いた絵馬の願い事が同じことだったことから出会う
③ 好きなバンドやアーティストを追っかけて出会う
④ 小さなカフェで偶然隣り合わせになり、同じコーヒーを注文して出会う
⑤ 海岸や山で迷子になり、一緒に帰ることで出会う
⑥ 気分が悪くなったところを助けてもらって出会う
⑦ 危ない人や動物から助けてもらって出会う
⑧ 転校生として出会う
⑨ 図書館で同じ本を取ろうとして手が触れ合って出会う
⑩ 落とし物を拾う、拾ってもらって出会う
以上、運命的な出会い方をご紹介いたしました』
「はあ? 何この……!」
思わず出た声を、あわてて止めた。幸い、パパとママには気付かれなかった。
あたしは気を取り直し、追加の質問を入力する。
『あたしも彼も、小学生なの。小学生同士の運命的な出会い方を教えてよ』
返事はすぐ返ってきた。だけどそれは『利用規約に基づき、お答えできません』という、予想外のもの。
返事の意味が分からなくて、首をかしげて考える。その結果、気付いたのは『パパのパソコンで、パパのAIくんに聞いてるからダメなんだ!』ということ。
確かに、パパが自分を小学生だとうそついて『小学生と運命的な出会い』をしようとしたら犯罪だし、想像しただけで気持ち悪い。
新しい質問をするのをあきらめ、回答の中から、使えそうなものを選ぶことにした。
新幹線、ライブ、カフェも小学生にはムリだし、山じゃなくても、迷子にはなりたくない。気分が悪い時や危ない時に、彼が助けてくれるかどうかも分かんない。
「て言うか、相手を選べないやつばっかじゃん!」
小声でさけんだ後、深呼吸で気持ちを落ち着け、回答の続きを読む。そして最後の方に「これだ!」という回答を見付け、ウキウキしながら土曜日が来るのを待った。
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