教えて! AIくん

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

教えて! AIくん

 その夜。パパとママがリビングでテレビを見ている間に、こっそりパパの部屋に入る。パパのパソコンに入っているあるアプリを使うために。 『こんにちは! AIくんです。気軽にお話ししてね!』  立ち上がってすぐ、そんな文字が表示された。  そのアプリの名前は『AIくん』。チャット形式で、質問に答えてくれたり、相談に乗ってくれるの。なんでパパのパソコンに入っているのかは知らないけど(多分、仕事で使ってるんだろうな)これを見付けてから、何度もこっそり使ってる。バレないように、使った後は質問ごとちゃんと消してるよ!  さっそく質問を入力する。 『気になる人がいるの  彼との運命的な出会い方を教えて!  できるだけたくさん!』 『承知しました』  短い返事の後、長い文章の返事がきた。 『お答えいたします ① 飛行機や新幹線で隣同士になって、一目惚れをする ② 神社で書いた絵馬の願い事が同じことだったことから出会う ③ 好きなバンドやアーティストを追っかけて出会う ④ 小さなカフェで偶然隣り合わせになり、同じコーヒーを注文して出会う ⑤ 海岸や山で迷子になり、一緒に帰ることで出会う ⑥ 気分が悪くなったところを助けてもらって出会う ⑦ 危ない人や動物から助けてもらって出会う ⑧ 転校生として出会う ⑨ 図書館で同じ本を取ろうとして手が触れ合って出会う ⑩ 落とし物を拾う、拾ってもらって出会う 以上、運命的な出会い方をご紹介いたしました』 「はあ? 何この……!」  思わず出た声を、あわてて止めた。幸い、パパとママには気付かれなかった。  あたしは気を取り直し、追加の質問を入力する。 『あたしも彼も、小学生なの。小学生同士の運命的な出会い方を教えてよ』  返事はすぐ返ってきた。だけどそれは『利用規約に基づき、お答えできません』という、予想外のもの。  返事の意味が分からなくて、首をかしげて考える。その結果、気付いたのは『パパのパソコンで、パパのAIくんに聞いてるからダメなんだ!』ということ。  確かに、パパが自分を小学生だとうそついて『小学生と運命的な出会い』をしようとしたら犯罪だし、想像しただけで気持ち悪い。  新しい質問をするのをあきらめ、回答の中から、使えそうなものを選ぶことにした。  新幹線、ライブ、カフェも小学生にはムリだし、山じゃなくても、迷子にはなりたくない。気分が悪い時や危ない時に、彼が助けてくれるかどうかも分かんない。 「て言うか、相手を選べないやつばっかじゃん!」  小声でさけんだ後、深呼吸で気持ちを落ち着け、回答の続きを読む。そして最後の方に「これだ!」という回答を見付け、ウキウキしながら土曜日が来るのを待った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!