<1・一目惚れは突然に。>

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 ***  秘宝管理クラブ、なるクラブの場所は旧校舎一階、東の端の端にあるらしい。  今、うちの小学校では新校舎以外ほとんど使われていない。昔はもっと子供の数が多かったため新校舎と旧校舎の両方が使われていたのだが、何年か前に学区に新しい小学校が作られることになった関係で一気に子供の数が減り、新校舎だけで事足りるようになってしまったというのが真相らしい。  旧校舎と言っても、昔の学校の怪談とかに出てきそうな木造校舎ではない。ちゃんとコンクリ造りの建物だ。  ただし、老朽化が進んでいるのは間違いないようで、外から見ても柱のあちこちがカビていたり、嫌な感じのひび割れが見つかったりはする。そのうち取り壊されるのではという話だが、それがいつ、どのようにという具体的な話は何も聞かされていないのだった。  で、今はほとんど使われることもない旧校舎の一階に、わざわざ秘宝管理クラブとやらの部室を作ったというのである。  そんなの、生徒の一存でどうにかできることではない。先生が許可を出したからそういうことになったはずだ。ならば、そのクラブは部員数一人でも成り立つような、そんな特例が認められるような価値あるクラブだったということなのだろうか。 「うー……やっぱこの校舎、なんか暗い。妙に湿っぽいし」  ぶつぶつ呟きながら歩くひかり。大きな声では言えないが、元よりオバケの類はあまり得意ではない。声に出すのも、自分を鼓舞するためにわざとしていることだった。 「こんなところに部室作るとかさあ。いい趣味してるっていうかさあ。いや、春風くんのことだからきっと何か思惑あってのことなんだろうけど、でも……」  ぼやきながらも薄暗い廊下を進むのは、春風のことを知りたいという気持ちが勝っているからに他ならない。きゅ、きゅ、と上履きがこすれる音を聞きながら一歩ずつ前へと歩を進める。  一階の東端。階段のすぐ横の部屋。マチカからはそう聞いていたが、果たして。 「……?」  やがて、ひかりが辿り着いたのは一つの部屋だった。プレートには“管理室”と書かれている。管理クラブの部室は、ここだろうか。廊下側の窓が全部黒いカーテンで覆われているのがなんだか不気味なのだが。 「し、失礼しまぁす……」  ここで立ちすくんでいてもラチがあかない。恋を実らせたいのであれば、とにかく一直線に突き進むしかないのだ。ひかりは意を決して、スライドドアに手をかけたのだった。
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