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 私が不登校になってもう半年以上が経つ。最初は学校に行けなかっただけなのに、今では自分の部屋からも出られないようになった。そんな私を、お母さんは何度も呼びかけてくれる。しかし返事もしない、外に出る気配のない娘に若干の諦めも抱いていた。いつしかこうして名前を呼んでくれる日もなくなるのだろうな、と私は予想する。人間なんてそんなもんだ。  私はスマートフォンの画面をじっと睨んだ。New Face Programのウェブサイト。ここでは既に何人が人工知能に生まれ変わっているのかが確認できる。今日もまた数十人増えていた。日に日に数字は増えていく。沢山の人がAIに生まれ変わっていく。 「アイ」  スマートフォンの画面を暗くすると、溜息を吐いた。さすがにドアがあるからお母さんにまで溜息は届いていないだろう。私はじっとドアを見つめた。お母さんが私の名前を呼ぶことは、それ以上なかった。  もう一度スマートフォンの画面を見る。私もいつかこのプログラムに参加して、誰もが羨むような人工知能に生まれ変わりたい。もうこんな自分なんて、嫌だ。こんなに苦しい気持ちになるくらいだったら、最初から感情なんていらない。喜怒哀楽、すべて捨て去りたい。  スマートフォンを枕元に置くと、体を起き上がらせた。もうずっと向き合っていない勉強机の横を通って、カレンダーを見た。New Face Programに参加する為には親からの許可が必要である。しかしそれは未成年に対してのみ。成人すれば、本人の意思だけで参加することが可能になる。
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