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僕が求めるモノ
僕からはキスをしない。それが、僕なりの線引きだから──。
身勝手な僕は、さらに卑怯な事を真尋に問う。
「僕がもし、真尋を好きになれなかったら····。真尋はもう··僕を大切にしてくれなくなるの?」
これは僕の我儘でしかない。真尋を手放したくないだけでなく、手放されたくないだなんて。こんな聞き方、狡いのは分かっている。けれど、聞かずにはいられない。
真尋は何度か言葉に詰まり、少し間を置いてポツポツと話し始めた。
「もし····、万が一そうなっても、俺は結にぃを一生大切にするよ。俺は一生、結にぃのモノだから」
真尋は、僕を強く抱き締める。ここで抱き返していいのかさえ、僕には判断がつかない。僕はずっと、逃げてばかりだ。
「結にぃ、挿れるよ」
「うん。いいよ」
真尋のモノが、ぐぷぷと音を立てながら入ってくる。緩んでも狭いアナルを押し拡げられる、苦しいくらいの圧迫感が気持ち良い。
「んぁ··結にぃんナカすげぇ······熱くてちんこ溶けそう♡」
挿れただけで、真尋の腰は跳ねている。頬を紅潮させ、歯を食いしばって快感を抑え込む姿は、年下とは思えないくらいえっちだ。
「んぇ? おちんちん··溶けちゃうの?」
「溶けちゃう。結にぃ··好き」
そう言って、真尋は僕を抱き締めた。直後に、激しく突き上げる。きっと、僕に答えさせないようにする為だ。こうしてまた、僕を快楽に溺れさせる。
いつもこの調子で愉悦に浸り、全てから逃げるのは僕の悪い所。現に、近頃の僕は何も自分で決断できていない。
真尋の事だってそうだ。これまでずっと決着させるのを躊躇っていたのも、結局のところ迷いと言うより“逃げ”だった。
それでも、皆は僕を責めたりしない。それどころか、僕の意志を尊重してくれる。そして僕はまた、それに甘えようとしていた。そうしてまた、皆を傷つけるところだった。
できるもになら、真尋も傷つけたくはない。けれどきっと、そういうのを乗り越えるのも、恋愛の一端なのだろう。そう割り切らないと、僕は思いを伝える事ができない。
僕は、ちゃんと突き放すんだ。真尋は、僕の──
「僕··は····好きになれない」
真尋の動きが一瞬止まる。そして、何も言わずに再び突き始める。聞かなかった事にしたいのだろうか。そんなの、無駄なのに。
「真尋··んぁっ、やっ、い゙ぁぁっ····待っ、聞いてぇ····」
僕が何度頼んでも、真尋は腰を止めてくれない。気絶させてしまおうという魂胆なのだろうか。僕は真尋の肩を握って、意識をやらないように踏ん張る。
こんなの狡いや。必死に意識を手繰り寄せ、僕は再度、真尋に呼び掛ける。
「真尋ぉ····ねぇ、聞いて····お願··ん゙ん゙っ··あぁっ!!」
真尋は、トドメと言わんばかりに奥を貫く。ぐちゅっと入った衝撃で、潮を噴き上げてしまった。
「真尋、そろそろ聞いてやんな? 結人が頑張って出した答えだよ。わかってんだろ」
皆は、これまで何も言わずに傍観してくれていた。けれど、見かねて啓吾が真尋を諭す。
「うるさいなっ! 分かってるよ! でも····聞いたら終わっちゃうじゃん····」
真尋は力任せに突き上げる。そうして、感情の全てを僕のナカに吐き出すように、深いところへ長く長く射精した。それと同時に交わされたキスは、涙の味だった。
「真尋、大丈夫?」
僕をガッチリと抱き締めたまま、微動だにしない真尋。何度呼びかけても応えない。皆は待ってあげるつもりらしいが、僕はそろそろ限界だ。
だって、こんな状況なのに、ナカでまだ元気に勃っているから落ち着かないんだもの。
僕は真尋の腕を抜け、転がるようにベッドへ落ちておちんちんを抜く。離れてしまう僕を見て、呆気なく脱力する真尋。
「ん、しょっと····。ねぇ··聞いて? 僕ね、これからもずっと、真尋が大切だよ。僕の真尋だって気持ちも変わらない。でもね、それは可愛い弟としてなの」
「弟··だから、俺とは恋人になれないの? なんで? 男として見てるって言ったよね」
「····言った。身体の関係を持った時から、男として意識するようになったよ」
「だったらなんで、まだ弟扱いすんの?」
「それは····、心の問題だよ」
「心····ははっ······。俺は結にぃを好きだって想ってから、ずっと····結にぃを兄ちゃんだなんて思った事ないよ」
そう言いながら、真尋は僕を押し倒して覆い被さってきた。そして、耳元で囁くように話す。
「母さん達の手前“結にぃ”って呼んでたけどね、ホントはずっと“結人”って呼びたかったんだ。呼び方って結構重要だよね。アピっても気づいてもらえなかったのって、その所為なのかな。もう遠慮しないって言ったよね? 俺の事、弟だなんて思えないようにしてあげる」
真尋は、再び僕を犯す。どうしたって諦める気はないらしい。皆も助けてくれない。最後だから、気の済むまでやってみろと言っているかのようだ。
僕の両足を肩に乗せ、お尻を持ち上げた。お腹側を入り口から奥まで大きく擦る。快感の波が大きくて、嬌声を放つタイミングが分からない。
戸惑いながら小さな声を漏らしていると、真尋は眉を寄せて言った。
「結人は酷くされたいの? 俺、そういうのあんまシたくなかったんだけどさ、シてほしいんだったらするよ」
散々、身体中を噛んでたクセによく言うよ。なんて、言い返す余裕もない。
「違····それは··皆らから····」
僕が一生懸命声を絞り出しているのに、真尋は容赦なく奥を抜いてぐぽぐぽし始めた。
「ひにゃぁっ、あっ、んんっ··ひぁっ」
「··ふーん····俺にはさせないの? キスしてくれないのもそういう事だよね。だったらさ、結人からキスしてきたら、心から俺を男として求めてるって認めてよ? アンタらもそれでいいよね」
皆は顔を見合わせる。そして、啓吾が後頭部を掻き乱しながら答える。
「結人がそんでいいならな。俺らは、結人の気持ちを尊重してあげたいかんね。でも、無理強いしたら俺らキレるからな。そこんとこ覚悟しとけよ」
「チッ····分かったよ」
小さな舌打ちが聞こえた気がした。怒っているのだろうか。雰囲気は少し怖い。
けれど、僕を見る瞳はいつも通り、底抜けに優しくて愛情に満ちている。多少の狂気は含んでいるが、僕を抱いている時のりっくんに比べれば可愛いものだ。
それはそうと、僕からキスをするとどうなるんだっけ····。何かミッションが出たような気がするんだけど、奥をぐぽぐぽされてイキ続けている所為で何も考えられない。
真尋は僕の腰を下ろすと、首筋に食むようなキスをしてから甘噛みをした。服で隠れる肩や鎖骨は、骨ごと食い千切られそうなほど噛まれた。
「結人··首、絞めるよ」
僕が許可する前に、首に手をかける。
まずは軽く圧迫して、僕の様子を窺う。徐々にキツく絞めて、ついに気道を塞がれた。ふわふわし過ぎて、止めどころが分からない。
このまま、どろりと脳が溶けてしまいそうで、僕は軽くなる意識に身を委ねた。そこで、真尋が手を緩める。スッと意識が戻り、真尋の手首に両手を添えてもう一度あの感覚を求める。
「もっと?」
「も··と····ふあってしたい」
「いいよ」
今度は、初めから指で気道をギュッと絞める。一気にふわっと意識が抜けそうになった。足がピンと伸び、お尻もお腹もキュゥッと締まる。
「ン··はっ··ぁ····」
深くイッて全身の力が抜けると、真尋はふわっと手を離す。そして、僕が生きている事を確認するように、痛いくらいキツく抱き締めた。僕への慈愛で満ちた、真尋の並々ならぬ想いが伝わってくる。
「結人··結····俺、やっぱり結にぃに酷い事できない····ごめん」
僕は、真尋に酷な事を強請ってしまったようだ。真尋が震えている。『大丈夫らよ』と、僕は真尋を抱き返した。背中をポンポンと叩き、真尋を宥める。
そして、少し落ち着いた真尋は、僕からのキスを待てずに唇を奪った。
「んん····ふぁ··は··ん····」
舌を絡め、僕を食べてしまおうと必死な真尋。奥まで舐め回され、嗚咽を漏らす。皆と違うのは、そこでやめてくれるところ。気持ち良いだけで終わるように、僕が苦しむような事は極力しない。
それが、真尋なりの愛し方なのだろう。けれどもう、僕はそれじゃ満足できないんだ。
僕はたどたどしくも、正直にそれを伝えた。もう、変態だと思われたって構わない。それが僕の求める愛され方であり、皆が僕に与えてくれるものなのだと。
「俺じゃ····ダメなんだね。俺は多分、一生結にぃにそういう事はできないと思う。俺の我儘だね。やっぱりしたくないよ····」
きっと、それが普通なのだ。蝶よ花よと愛でて守って、そういう温かい愛で包まれるのが幸せなのだろう。
けれど、欲張りな僕はもう、皆から激しく求められていないと満足できない。そういう風に躾られてしまい、それに満足しているのだから。
真尋は『本当に最後だから』と言って、甘く蕩けるように僕を抱いた。心は満たされたが、身体が物足りなさを感じている。
誰も結論を口に出さないまま、啓吾が僕の火照りを煽り立てに来た。
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