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「私、中学の体育の授業で柔道ならやったよ」
「柔道と合気道を一緒にするな。話にならない。言って損した」
蓮が軽くうんざり顔を見せると、なぜか高峰が横でクスッと笑った。
「そもそもなんだけど。君たちふたりはどういう関係なの?」と高峰は質問を投げかける。
「友達です!」
「同じクラスで偶然席がとなりなだけです」
あうんの呼吸で答えたふたりだったが、蓮の答えに咲衣は膨れっ面になった。もっとも、いまだに彼とは連絡先すら交換していない。
「……なるほど。おおむねわかったよ」と高峰は自分専用のデスクチェアに座って足を組んだ。
「わたしの妻は中学の教師でね。小田野くんの元担任だったんだよ。『かわいい教え子が芦河高校に入学するから、困ったときは手を差し伸べて見守ってあげて欲しい』と泣いて頼まれたから……」
「話盛らないでくださいよ。泣いて頼まれたとか嘘でしょ」
咲衣は蓮が高峰と打ち解けていることに内心驚いていた。教室にいるときより肩の力も抜けて見える。それに高峰も思っていたより気さくな教員だった。咲衣は躊躇しつつも「私も、明日から昼休みにここに来ちゃダメですか?」ときいてみた。
ふっありえない、と蓮はきっぱり即答する。
「じつは、さすがに私もそろそろ限界っていうか……露骨になんか言われるわけじゃないんだけど。教室での居心地がかなり悪いというか」
つい本音をもらすと蓮も高峰も黙って咲衣に視線を向けた。
「えっ、マジな空気にならないで。ちょっと君もなんか言ってよ!」
ふん、と蓮は視線を横へ流した。
高峰は「いいですよ。許可します」と答える。
「ありえないだろ」と蓮は同じセリフを吐きすてた。さっきより何倍も嫌悪感をあらわにしている。
やったー!よかったー! と咲衣は両手を合わせて笑顔が戻った。
「ちょっと待ってくれよ。なんでこんなふてぶてしいやつと……」
蓮はテーブルに手をついて抗議した。
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